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解雇の法的取り扱い

第064_2号 1999年7月

はじめに

リストラや失業率の増加など雇用不安が高まっている世の中ですが、解雇について基本的な法律上のポイントを押さえておきましょう。

1. 退職と解雇のちがい

退職とは、労働者側で雇用契約を終了する意思がある場合です。一方、解雇とは使用者側の一方的な意思で雇用契約を解除することです。

昨今ではリストラということで、詐欺、脅迫まがいの退職勧奨により、従業員を退職に追い込む会社もあるようです。

会社側としては、労働者が自分の意思で辞める退職扱いにしたいのです。解雇ということになると、その解雇がはたして法的に有効か無効かであとあと面倒な裁判沙汰になりかねないからです。

2.解雇の制限

労働基準法では使用者が勝手に解雇できない解雇制限の規定を設けています。次に該当する場合は、労働基準監督署に認定を受けた場合以外は解雇できません。

  • 業務上の傷病の療養のための休業期間とその後の30日間
  • 産前産後の休業期間とその後の30日間
  • 労働者が労働基準法違反を監督署に申告したことを理由とする解雇
  • 国籍、信条、社会的身分を理由とする解雇
  • 労働組合の結成等を理由とする不当労働行為となる解雇

以上のほか、男女雇用機会均等法や育児・介護休業法においても、解雇を制限する規定が設けられています。

3.解雇の正当事由

上記の解雇制限規定に該当しなければ使用者は労働者を自由に解雇できるかというと、そうはいきません。解雇するだけの正当事由が必要なのです。それは今までの裁判上の判例から要求されています。正当事由の例としては、

  • 2週間以上の無断欠勤
  • 会社内での暴力、窃盗など
  • 転勤など業務命令に従わない
  • 長期間の病気等による欠勤
  • 職務能力が実際の勤務に耐えない
  • 会社の倒産を回避する最後の手段として経営上の必要性がある(整理解雇)

などです。

4.解雇の予告制度

解雇制限規定に該当せず、解雇する正当事由がある場合にはじめて、解雇が実施されるわけですが、すんなり即時解雇というわけにはいきません。

労働基準法では、解雇の予告制度を設けています。

すなわち、使用者が労働者を解雇する場合は、少なくとも30日前に予告するか、即時解雇する場合は30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければなりません。

ただし、日雇いや2ヶ月以内の短期間の労働者等は適用除外となります。

また、天災等により事業の継続が不可能な場合、労働者の責めに帰すべき懲戒解雇の場合には労働基準監督署の解雇予告除外認定を受けて、解雇予告制度を適用しないことができます。

アトラス総合事務所 公認会計士・税理士 井上 修
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