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マイホームの売却損

第071_2号 2000年02月

はじめに

マイホームを売却して益が出た場合は3千万円の特別控除があることはよく知られています。では損が出た場合は税金面で何もメリットがないというと決してそうではありません。

次のような税金上のメリットがありますので、しっかり確定申告してください。

1. 損益通算

マイホームの売却損は、給与所得などの他の所得と損益を通算できます。

サラリーマンの場合、通常、会社の年末調整で税金の手続きが完了していますが、自ら確定申告することにより給与所得のプラスとマイホームの売却損を通算して給与所得のプラスを減少させるのです。

それによってもともとの給与所得に課税された源泉所得税が過大となり、納めすぎた税金が戻ってくるという仕組みです。個人事業者の場合も損益通算により事業所得等が減少し、納める税金が少なくてすみます。

確定申告により所得税が減少すると住民税や国民健康保険料などもそれに応じて減少しますので、総合的なメリットは思いのほか大きいものとなります。

また、一定の場合には次のような税金面のメリットがあります。

  • 老年者控除や配偶者特別控除は合計所得金額が1000万円を越える人には適用がありません。上記の損益通算により合計所得金額が1000万円以下となることによって適用されることが可能となります。
  • 夫のマイホームの売却損が大きくて損益通算後の所得が76万円未満になれば、妻にある程度所得がある場合に夫を妻の配偶者控除配偶者特別控除の対象とすることができる場合があります。妻でなくても生計を一にする親などの扶養親族となることも可能です。それにより妻や親の税金を軽くすることができます。

2.売却損の繰越控除

サラリーマンの場合、損益通算はその年限りのものです。マイホームの売却損が大きくて損益通算しても赤字が残ってしまっても赤字は原則としてその年で切り捨てられます。

しかし一定の要件に該当すればこの赤字を翌年以降3年間繰り越して、翌年以降の所得と通算できる制度があります。それが「居住用財産の買い換えの場合の譲渡損失の繰越控除」という制度です。

ただし、この制度の摘要用件は次のようになかなか難しいものとなっています。

  • 譲渡した居住用財産は所得期間が5年を超えている。
  • 譲渡した居住用財産にかかる住宅ローンにまだ残高がある。
  • 新たに居住用財産を住宅ローンで買い換えている。
  • その他、合計所得金額が3000万円以下の年に限る。

など細かい用件があります。

この制度の摘要用件に該当する人はそう多くはいないと思いますが、平成11年分から買い換え資産の住宅ローンについて従来認められなかった住宅ローン控除の併用ができるようになりました。また繰越控除は所得税だけであったものが平成11年分から住民税でも繰越控除が認められるようになりました。

アトラス総合事務所 公認会計士・税理士 井上 修
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