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雑損控除

第094_2号 2002年2月

デフレ不況が深刻化する社会情勢で、盗難事件等も多発しているようです。所得税の所得控除の一つである雑損控除を使う人も増加しているのではないでしょうか。

1.適用要件

①対象資産

住宅、家財、衣類、現金等の生活に通常必要な資産です。

別荘や時価が30万円を超える宝石、貴金属、書画骨董など、いわゆる生活に通常必要でない資産は対象外です。

生活に通常必要でない資産については、他に譲渡所得があれば、譲渡所得の計算上、損失が控除できる場合があります。

②資産の所有者

 本人および本人と同一生計の親族で合計所得金額が38万円以下のものが所有する資産が対象となります。

生計を一にしているかどうかは損失が生じた日において、合計所得金額が38万円以下かどうかはその年の12月31日において判断します。

③損失の発生原因

次の3つの原因によるものです。

  • 災害…震災、風水害、火災、噴火、爆発、害虫などの自然的、人為的な異常な災害による損害
  • 盗難…盗難された金品のほか窓ガラスや鍵、家具などの破損による損害
  • 横領…自分の所有物を他人によって勝手に消費、処分されたことによる損害

これらの原因による直接の損害額だけでなく、これらに関連して支出するいわゆる「災害等関連支出」も控除の対象となります。

たとえば

  • 災害等により壊れた家屋等の取壊し費用、原状回復のための修繕費など。損失が発生した年の翌年の3月15日までの支出を含めることができます。
  • 豪雪地帯の家屋倒壊防止のための雪下ろし費用

2.控除額の計算

次の①と②のいずれか多いほうの金額が雑損控除額となります。

① A-B-C
  • A:損失額(災害関連等支出を含み、時価ベースの金額)
  • B:保険金などで補填される金額
  • C:総所得金額等の課税標準の合計額×10%
② 災害等関連支出のみの金額-5万円

3.その他の留意点

①添付書類
  • 消防署や警察署から交付された災害や盗難を受けたことの証明書
  • 災害等関連支出にかかる領収書
  • 住宅や家財等の損失額の明細書(損失を受けた資産一つ一つについて損失を受けた当時の時価を見積もる。)
②雑損失の繰越控除
雑損控除額が大きすぎてその年の所得金額から控除しきれない場合は、その控除しきれない金額を翌年以降3年間に繰り越して控除できます。
その場合は申告書第四表(損失用)を添付して、期限内に申告することが必要です。
③災害減免法との選択適用
その年の合計所得金額が1000万円以下の者が災害(盗難、横領は対象外)によって住宅や家財の価額の2分の1以上の損害を受けた場合は災害減免法による税金の減免を、雑損控除に代えて、受けることができます。
アトラス総合事務所 公認会計士・税理士 井上 修
◆発行 アトラス総合事務所

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