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相続時精算課税制度

第105_1号 2003年01月

1.はじめに

平成15年度の税制改正により相続時精算課税制度が今年の1月1日からスタートしました。身近な制度ですので、以下説明いたします。

2.制度の内容

親から子への贈与は贈与金額から基礎控除である110万円を控除した残りの額に10%~50%の税率を乗じた贈与税を税務署に申告することにより完結していました。

(贈与額-110万円)×税率=贈与税額

新制度は、親(65歳以上)から子(20歳以上)への贈与金額から2,500万円を控除した残りの額に20%の税率を掛けて贈与税の申告をします。そして、親の相続税の計算時にこの生前贈与の財産も相続財産に含めて相続税を計算し、生前に納めた税率20%の贈与税を相続税から差し引くことにより精算する仕組です。

(親から子への贈与)

( 贈与額 - 2,500万円 )×20%= 贈与税額
親が死亡 親が死亡
相続財産に含める 相続税から控除・精算

旧制度も生きており、両制度の選択ができます。

3.新制度の具体的な効果

①2,500万円まで贈与税がかからない。
上記の算式のとおり贈与額から2,500万円を控除して20%を掛けますので、贈与額が2,500万円まで贈与税は一切かかりません。
②両親からの贈与で5,000万円まで贈与税かからない。
新制度は父親と母親ごとに選択できるので、子供への贈与の新制度の適用を両親が選択すれば、それぞれ2,500万円までの贈与、つまり2人で5,000万円までの贈与に対して贈与税はかかりません。
③子供が多ければ億単位の贈与ができる。
両親から子供1人への贈与で5,000万円まで贈与税がかからないわけですから、子供が3人いれば合計1億5千万円の贈与をしても贈与税がかからないことになります。

4.両親が死亡したときの精算

現行の相続税法では、相続税がかからない財産の金額(基礎控除)は以下の算式の額です。

5,000万円+1,000万円×相続人数

配偶者と子供2人の計3人が相続人の場合には5,000万円+1,000万円×3人の8,000万円まで相続税がかかりません。

このケースで、新制度による生前贈与を死亡した父親が子供2人に2,500万円ずつしていたとします。

①相続財産が3,000万円あった場合
相続財産はこの3,000万円と生前贈与5,000万円(2人分)の計8,000万円になります。8,000万円(基礎控除)以下ですから相続税はかかりません。
②相続財産が4,000万円あった場合
相続財産は4,000万円+5,000万円の計9,000万円となり、相続税がかからない財産の8,000万円(基礎控除)を超えますので相続税がかかります。

このように生前贈与財産は相続時の相続財産と合算されて相続税が計算されます。 

新制度は本来相続によってもらう親の財産を生前中に先取りするという仕組の制度と理解されるとよいでしょう。

アトラス総合事務所 公認会計士・税理士 井上 修
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