アトラスNEWS ~Monthly 税務・経営・節税情報~

個人情報の流出にご注意!

第110_1号 2003年06月

1.はじめに

世間で住民基本台帳ネットワークについて各地方自治体が大騒ぎしています。

しかし、同じ住基ネットを扱う自治体で個人の税金情報が流出する(現実にしている)危険性が大きい問題があります。今回は実際に起きた事例で説明いたします。

2.住民税特別徴収のお知らせ

あるお客様から「役所から毎月の給与から天引きする住民税のお知らせが来たのだけれども、当社の給料の分だけでなく従業員の不動産所得の分の税金も含まれていて、とても給与から天引きできる額ではないのですが・・・」という連絡が入りました。

昨年の所得にかかる住民税の通知は5月から6月にかけて会社や個人に送られてきます。

個人が自分で納付書でもって住民税を払う方式が普通徴収で、会社の給与から天引きされて会社が住民税を払う方式が特別徴収です。

3.従業員の所得が全て分かってしまった

従業員の不動産経営から生じた所得にかかる税金まで勤めている会社に通知されたわけです。通知書には税額だけでなく不動産でどれだけ儲かっているかまで記載されています。

当の従業員は大変な驚きようです。「なんで俺の許可なしに、俺の全所得が勤め先に通知されるのか?」とカンカンです。

4.これが事の原因です

この従業員は、会社からの給与所得と、自分が経営するアパートの不動産所得とを確定申告しました。確定申告書の複写になっている2枚目は税務署から住所地の市区町村へ送付されます。

これとは別に、従業員に給料を支払っている会社は昨年1年間の従業員の給与データを従業員の住所地の市区町村に提出しています。この給与データが市区町村に出ていることは、通常この個人の住民税の納税は原則特別徴収ということになります。

そして、この給与データと税務署から回ってきた確定申告書の2枚目のデータを見比べます。

ここで、確定申告書記載の所得が勤めている会社の給与だけであればそのまま住民税は特別徴収されます。

しかし、確定申告書に給与のほかに不動産所得などの他の所得があると、まず、確定申告書に不動産所得などを普通徴収にする記載欄のチェックがあるか見ます。チェックがあると、給与にかかる住民税だけ特別徴収にして、他の所得は普通徴収にします。

では、チェックがついていないとどうするでしょうか?答えは役所の担当者の裁量です。つまり、勝手に決められてしまうのです。「この人は給料が多いから不動産所得の税金も特別徴収にしてしまえ!」と判断してコンピュータに入力するとそうなってしまうのです。

なんとも恐ろしい話ですが、役所に確認した結果「現行の地方税法ではそうなっています」という返事と「こういったクレームはよくあります」との回答でした。

単に、確定申告書にチェックマークを入れ忘れただけで、自分の全所得が会社に通知されてしまいます。

せめて、不動産所得の税金を「会社の給料から引くのか?個人宛に通知するのか?」くらいのお尋ねがあってしかるべきであると思いますが。

アトラス総合事務所 公認会計士・税理士 井上 修
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