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平成26年税制改正大綱

第235号 2013年12月

1.はじめに

平成26年度の税制改正大綱が12月12日発表されました。税制改正の大きな流れは、消費税増税、法人減税、個人増税といったところです。それと景気対策としての税制改正の色が濃いのが今回の特色でしょうか。

2.給与所得控除の見直し

給与所得は、「給与収入-給与所得控除」により計算されます。現在は給与収入が1,500万円超になると給与所得控除は245万円で頭打ちになります。改正では、平成28年に給与収入が1,200万円超になると給与所得控除は230万円で頭打ちとなり、平成29年には給与収入が1,000万円超になると給与所得控除が220万円で頭打ちとなります。

つまり、給与所得控除の上限額が減額される分、給与所得が増えますので、その分増税となるのです。

3.ゴルフ会員権等の譲渡損

バブル期に数千万円の値段がついていたゴルフ会員権も今では半値八掛け五割引き以下の値段しかついていません。リゾート会員権も同様です。

これらゴルフ会員権等を売却して多額の売却損を計上すると、給与所得等の他の所得と損益通算ができて節税になりました。

ところが改正により、平成26年4月1日から損益通算ができなくなります。ゴルフ会員権等を譲渡して節税ができるのは来年の3月いっぱいとなりました。逆に会員権の売りがこれから多く出ると思われますので、会員権の買いのチャンスであるともいえます。

4.交際費の半分が経費に

交際費課税は資本金の大きさによって異なります。現在では、資本金1億円超の大企業は、いくら仕事で交際費を使っても会社の損金には1円もなりません(例外として、一人当たり5千円以下の飲食代については、一定の条件のもとに会社の損金とされています)。

一方、資本金1億円以下の中小企業は、現在800万円までの交際費については全額会社の損金として認められています。

改正では、資本金1億円超の大企業についても使った交際費の50%を会社の損金とします。特に上限を設けていませんので、交際費を1億円使っても5千万円は会社の損金となります。

資本金1億円以下の中小企業については、現行の800万円の交際費枠と改正の交際費の50%枠の有利な方を選択することができます。

この改正は元気のない飲食店の活性化を図る目的で、夜の街も明るくなりそうです。

5.設備投資減税

産業競争力強化法に規定する機械装置、工具、器具備品、建物、建物附属設備、構築物、ソフトウェアを取得すると、取得価額を全額損金とすることもできるし、取得価額の5%~10%の額を税金から直接控除する税額控除を選択することもできます。

機械装置は160万円以上、工具及び器具備品は120万円以上(一つが30万円以上で合計120万円以上も可)、建物、建物附属設備及び構築物は、120万円以上(一つが60万円以上で合計120万円以上も可)、ソフトウェアは、70万円以上(一つが30万円以上で合計70万円以上も可)が対象となります。

資本金1億円以下の中小企業者に限って、サーバーとソフトウエアがこの制度の対象となっています。また、資本金3,000万円以下の企業であれば取得価額の10%の税額控除(法人税額の20%が上限)を適用することができます。

6.所得拡大促進税制の拡充

企業が給与総額を増額すると税金を安くする制度です。要件は①給与総額が平成24年度に比べて5%以上増加していること、②給与総額が前年度以上であること、③1人当たりの平均給与額が前年度超であること、の3つです。

要件に該当すると給与支給増加額の10%を税額控除することができます(法人税額の10%、中小企業者は法人税額の20%が限度となります)。

改正ではこの要件を緩和して、平成25年~26年度は①の要件を2%以上、平成27年度は3%以上に、③の平均給与額も新入社員や退職者を除いた継続雇用者に対する給与額とされ、制度が適用しやすくなりました。

なお、平成25年4月1日以降に設立された法人で、給与の支給がある場合には、この所得拡大促進税制を無条件に適用できますので、適用漏れのないようにしなければなりません。

7.消費税の簡易課税制度

事業者が納める消費税納税額は、原則として売上などで「預かった消費税」から仕入や経費などの支払いで「支払った消費税」の差額として計算されます。

しかし例外として中小企業者の消費税納税に伴う事務負担を軽減する目的で、前々年の課税売上高が5,000万円以下の事業者には簡易課税による納税を認めています。

簡易課税では、「支払った消費税」を「預かった消費税」に業種別の一定割合(みなし仕入率)を乗じて簡易に計算します。

改正では、平成27年以降はみなし仕入率が金融・保険業で60%から50%、不動産業で50%から40%にそれぞれ引き下げられます。すると「支払った消費税」の額がその分減りますので消費税の納税額は増えることになります。事業者にとっては増税となります。

8.復興特別法人税の廃止

復興特別法人税は、本来の法人税額に10%を乗じた額です。本来は来年度末までの3年間を予定していたのですが、今回の改正により1年前倒しで廃止になります。

復興特別法人税を含んだ法人実効税率は38.01%ですが、廃止されると35.64%に下がります。平成26年4月1日以後開始事業年度から適用されます。

9.その他

試験研究費に対する税制で、試験研究費が増加した場合の税額控除で、控除割合が増えました。消費税の増税とともに自動車取得税は減税されますが、平成27年度から軽自動車税が増税されます。

アトラス総合事務所 公認会計士・税理士・行政書士 井上 修
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