アトラスNEWS ~Monthly 税務・経営・節税情報~

立退料

第253号 2015年06月

1.はじめに

アトラス総合事務所は、平成3年に開設してから今回で4回目の移転になります。過去3回の移転は自主的な移転で、今回は初めて立退きによる移転となりました。「来年3月末までには出て行ってください」という文書を受け取り、「立退料は当然もらえるのですよね?」と聞くと、「できる限りのことはさせていただきます」とのことでした。

2.立退料を請求する

立退料は相場があるものではありません。過去の判例等から事務所として利用していた場合の補償項目として、一般的に次の6項目があります。

(1)家賃差の補償
新たに借りる事務所の月額家賃と現在の月額家賃の差額を求め、それの24か月分を家賃差の補償とします。
(2)保証金の補償
新たに借りる事務所の保証金と現在差し入れている保証金の差額を求め、その差額を年3%で10年間借りた場合の利息相当額を補償とします。
(3)仲介手数料の補償
宅建業法で定められた仲介手数料相当額です。新たに借りる事務所の月額家賃を補償とします。
(4)引越料補償額
LAN工事、電気工事、電話工事、引越作業料、現場監理・諸経費等の見積額を補償とします。
(5)内装費補償額
パーティション工事、内装工事、雑工事、プロジェクトマネジメント費、現場廃材処分費の見積額を補償とします。
(6)移転雑費
移転案内の作成費、本店移転登記費用、登録変更費用、休日出勤費用などを補償とします。

3.立退料と税金

(1)立退料をもらった時
アトラスの場合、法人で立退料をもらいましたので、売上と同様に法人の収益となります。
個人事業者の場合は次のようになります。①建物を借りる権利(借家権)の消滅の対価であれば借家権を大家さんに売ったとして譲渡所得になります。②立退により賃借人が失う営業上の損失などを補償する場合は、事業所得や不動産所得の収入金額になります。①と②以外の立退料は 一時所得の収入金額となります。
(2)立退料を支払った時
法人の大家がテナントに立退料を支払う場合は、法人の経費となります。ただし、土地建物を取得するために、その土地建物を使用していた者に支払う立退料は、取得する土地建物の取得原価になります(法人でも個人でも同じ扱いです)。
個人が賃貸している不動産の賃借人を立ち退かすために支払う立退料は、不動産所得の必要経費になりますが、その不動産を譲渡するために支払う立退料は、譲渡所得の計算で譲渡費用として控除されます。
(3)立退料と消費税
立退料は、賃借人が有していた賃借権の消滅に係る補償や、立退により生じる収益あるいは移転費用等の補てんに伴い支払われるので、消費税が対象とする資産の譲渡の対価に該当しないため、消費税は課税されません。
アトラス総合事務所 公認会計士・税理士・行政書士 井上 修
◆発行 アトラス総合事務所

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