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スキャナ保存

第258_1号 2015年11月

1.はじめに

事業で使用した請求書や領収書などの書類の保管は、保管スペースを確保したり、書類を整理したりで、かなり手間もかかればコストもかかります。そこで、これらの書類をスキャナで電子データに変換して保存する発想は自然と出てきます。

今回は、このスキャナ保存の改正の概要を説明いたします。

2.スキャナ保存は普及していない

紙ではなく電子データで書類を保存する制度はかなり前からあるのですが、要件が厳しいことから実際にはほとんど使われていない状況です(全国で百数十件だけ)。

なぜ使われていないかというと、スキャナ保存の対象となる書類は、記載金額が3万円未満のみで、電子署名や費用がかかるタイムスタンプが必要だからです。このような状況から、利用促進を図るため今年の9月30日から要件が緩和されました。

3.要件は緩和されたのだが・・・

領収書等の記載金額が3万円未満という金額要件は廃止されました。金額にかかわらず、契約書や領収書、請求書などの取引関係書類はスキャナ保存の対象となります。

また、スキャナ保存をする際に必要とされていた電子証明書による電子署名も不要となりました。残るはタイムスタンプなのですが、これが厄介なのです。

4.タイムスタンプ

タイムスタンプとは、認定されたタイムスタンプサービス事業者により発行される電子的な時刻証明のことです。スキャナ保存をする場合のコンピュータシステム上の時刻は、修正が可能であるため、「いつ」「どのような情報があったのか」を証明するためにタイムスタンプが必要とされているのです。

タイムスタンプの認定事業者は数社しかなく、現在ではかなりのコストがかかります。NTT DATAのタイムスタンプサービスは、15万スタンプまで年額120万円かかります。

つまり、1スタンプあたり8円のコストがかかる計算です。このタイムスタンプの料金がもう少し下がればスキャナ保存の利用は飛躍的に伸びるでしょう。

5.会計まで一気通貫も

事業者がスキャナを使って会計処理の元となる領収書や請求書を読み込んで、それらを電子データ化すると、そのデータをネット経由でアトラス総合事務所が安全に取得することは可能です。アトラスではそのデータに基づいて会計処理をして、決算を組みます。そして決算をもとに作成した税務申告書を電子申告で税務署や地方公共団体に申告することまでできます。

さらに電子化された領収書や請求書データにタイムスタンプを押せば、スキャナ保存もでき、一石二鳥となります。完全にペーパーレスとなるときがもう目の前です。

アトラス総合事務所 公認会計士・税理士・行政書士 井上 修
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