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遺言書

第305号 2019年10月

1.はじめに

億単位の財産を残した相続があると、相続財産をめぐる争いが相続人間で生じることが間々あります。「私が死んでも兄弟仲良くやってくれよ」と生前親は願っていたとしても、タダでもらえる財産を前にするとそうはいかないのがこの世の定めです。

そうならないために生前に財産の配分を決める手段が遺言書です。この遺言書に改正がありましたので、以下説明いたします。

2.遺言書作成方法

遺言書作成には以下の3つの方法があります。

①自筆証書遺言
 遺言者が手書きで作成する遺言書です。遺言書の内容をいつでも修正することができるメリットがありますが、相続があった場合にはその遺言書の有効性を家庭裁判所で確認してもらう必要があります。これを検認と言います。
②公正証書遺言
 公証役場において公証人に遺言書を作成してもらう方法です。遺言書は公証役場で保管されるため安全確実であるのですが、証人を 2 人用意する必要があるので少し面倒です。私も証人の 1 人となったことがあります。
③秘密証書遺言
 遺言内容を誰にも知られたくないという場合に使われる方法です。遺言者が手書きで作成した遺言書を公証人が封印して保管します。ほとんど利用されていないようです。

3.自筆証書遺言の改正

今年の 1 月 13 日に自筆証書遺言制度が改正されました。以前は添付する財産目録を含め全文を手書きする必要がありました。改正により、財産目録をパソコン等で作成することができるようになりました。ただし、遺言書の本文に関しては、従来どおり手書きで作成する必要があります。

財産目録は、不動産の詳細な地番や面積、銀行口座情報などの詳細を記入するため、書き間違いや大変な手間がかかっていました。

また、不動産登記簿謄本や預金通帳のコピーなどの書面を添付することもできるようになりました。

4.自筆証書遺言を法務局で保管する制度

自筆証書遺言は、相続があってからその存在自体が明らかにならなかったり、複数の遺言書が出てきたり、相続人が意図的に廃棄するような問題があります。

来年の 7 月 10 日から、この自筆証書遺言を法務局に保管できるようになります。その概要は、次のようになります。

  • 法務局が遺言書の様式が法令に合っているかチェックする
  • 遺言書の原本を法務局が保管するとともに、画像情報を他の法務局と共有する
  • 相続人などからの請求に応じ、遺言書の内容や遺言書を保管している証明書を発行する
  • 相続人の誰かが遺言内容の確認などをすると、他の相続人に通知して、遺言書の存在を知らせる
  • この制度を利用すると家庭裁判所の検認をする必要がない

なかなか利便性が高い良い制度だと思います。

アトラス総合事務所 公認会計士・税理士 井上 修
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