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賃上げ促進税制

第348号 2023年5月

1.はじめに

近年、様々なモノやサービスの値段が上昇していますが、6 月 1 日から家庭向け電気料金が値上げとなることが決定しました。標準的な家庭の電気料金の値上げ幅は 14%~42%となります。この物価上昇を背景に政府の後押しもあり、基本給を上げるなど賃上げする企業が増加しています。

そこで、今回は賃上げをした企業に対する税制上の優遇措置についてご紹介します。

2.中小企業向け賃上げ促進税制

賃上げをした場合の優遇措置については、2013 年度税制改正で創設されました。その後、頻繁に改正され、2022 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度から制度内容が変更されます。タイミングとしては、2023年 3 月期の 3 月決算法人から変わりますので留意が必要です。

3.制度の概要

この制度は税額控除であるため、納付すべき法人税額を減らすことが可能です。ただし、赤字企業のように納付すべき法人税額がない場合には、この制度の恩恵を受けることができません。現状の黒字企業は全体の 38.2%(104 万社)です(出所:経済産業省)。

また、本制度の適用対象は従業員(パート、アルバイトを含みます。)のみとされており、役員や役員の親族は対象外となります。

4.適用要件

⑴ 通常要件
雇用者全体の給与が前期と比較して 1.5%以上増加していること
→増加額の 15%を税額控除
⑵ 上乗せ要件
雇用者全体の給与が前期と比較して 2.5%以上増加していること
 →控除率を 15%上乗せ
② 教育訓練費が前期と比較して 10%以上増加していること
 →控除率を 10%上乗せ

上記要件を 3 つとも満たすことで最大で増加額の 40%の税額控除を受けることが可能です。ただし、納付すべき法人税額の 20%が上限となります。

5.具体的な計算例

例えば、当期の給与総額が 5,200 万円、前期の給与総額が 5,000 万円の場合、前期比で 4%増加しているため、上記 4.⑴と⑵①の要件を満たします。よって、増加額 200 万円の 30%である 60万円の税額控除を受けることが可能です。

6.大企業向け賃上げ促進税制

資本金1億円超の大企業は、中小企業向けの制度とは適用要件が異なります。

⑴ 通常要件
継続雇用者の給与が前期と比較して 3%以上増加していること
→増加額の 15%を税額控除
⑵ 上乗せ要件
継続雇用者の給与が前期と比較して 4%以上増加していること
 →控除率を 10%上乗せ
② 教育訓練費が前期と比較して 20%以上増加していること
 →控除率を 5%上乗せ

※継続雇用者とは、当期及び前期の全期間において給与の支給がある雇用者をいいます。

アトラス総合事務所 税理士 黒川 洋介
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