週刊なるほど!消費税

対価の額(5)

第23号 2003/05/5

【先生】

 前回はみなし譲渡の対価の額について見ました。

 みなし譲渡は、原則としてそのときの時価で取引があったものと

みなすものですので、例えば会社の役員に無償で100万の絵画

を贈与した場合には、100万円で売ったのと同じこととされ、

 100万円×5%=5万円

5万円の消費税を納める必要があります。 

【生徒】

 贈与だからお金はもらってないんですよね。なのに税金だけは

払う必要があるんですか・・・

 税金分損した感じ・・・

【先生】

 そこで何とかみなし譲渡にあたらないようにしようと考える人が

でてきます。つまり、

「1円で売ったことにすれば、贈与じゃなくて売買だから、みなし

譲渡にはあたらないはずだ」

【生徒】

 なるほど。1円でも売ったことには変わりないから贈与ではない

ですよね。

【先生】

 そんなときのために別の規定が設けられています。それが低額

譲渡です。

 これは、資産をその時価よりも著しく低い対価で譲渡した場合に

は、その譲渡した金額ではなく、時価を対価の額とするというもの

です。

 但し低額譲渡の規定は法人が役員に譲渡した場合にしか適用が

ありません。

【生徒】

 でも著しく低い対価って、一体いくらなんですか?

【先生】

 通常は時価の50%に満たない場合を言います。

 ただその資産が棚卸資産の場合には、みなし譲渡の時と同様

に規定があります。

 棚卸資産を役員に譲渡した場合には、その金額が販売価格の

50%以上であり、かつ、仕入金額以上の時には低額譲渡には

該当しないというものです。

【生徒】

 会社に飾ってある100万円の絵画と、店頭で売っている100

万円の商品ならどう違うんですか?

【先生】

 時価100万円の絵画の場合には、その50%以上の金額で

譲渡した場合には低額譲渡にはなりません。

 つまり、49万円で役員に売った時には、時価の100万円が

対価の額になり、50万円で売った時にはその50万円が対価

の額になります。

 一方販売価格が100万円の商品の場合、仕入値が70万円

だとすると、時価の50%である50万円で売ったとしても、仕入

値の70万円未満ですので、低額譲渡となって100万円を対価

の額とすることになります。

【生徒】

 なんか複雑ですね。

 社内販売で役員の人に仕入値以下で売ったりしたら、全部

売値を対価の額にないといけないんですか?

【先生】

 社内販売ですと、全社一律とか勤続年数に応じて何割といっ

たように決められている場合が多いと思います。

 社内の人全員に同じ規定の値引率が使われるような時には、

低額譲渡としなくて問題ないでしょう。

 ただ役員のみ有利な値引率になっているような場合には、低

額譲渡となってしまう恐れがあります。

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