週刊なるほど!消費税

納税額の計算(51)
貸倒れ

第177号 2006/06/19

【先生】

 今回からは貸倒れにかかる消費税額の控除についてお話していきます。

【生徒】

 貸倒れ・・・あまり聞きたくない言葉ですね。

【先生】

 聞きたくなくても発生してしまうものです。

【生徒】

 世知辛い世の中だなぁ・・・

【先生】

 この貸倒れですが、まず対象となるのは受取手形や売掛金といった売掛

債権です。元の取引に消費税がかかっているものかどうかで判断します

ので、貸付金などの債権は対象となりません。

 また元の取引が非課税取引や免税取引でも当然対象からはずれます。

【生徒】

 当たり前といえば当たり前ですね。そしたら前回やったように、元の取引

が発生したのが免税事業者であった期間なら、それも対象から除かれる

ってことですね。

【先生】

 そうです。免税事業者の期間では消費税が発生していませんので。

 この貸倒れが発生した場合、元の取引では預った消費税を納税していま

すが、貸倒れということは消費税も含めた代金が回収できなかったという

ことですので、このままでは消費税を納めすぎということになります。

 そのため、貸倒れが発生した期間において、貸倒れにかかる消費税額を

その期の預った消費税から控除できることとしています。

【生徒】

 へー。ちゃんと考慮してくれてるんだ。

【先生】

 但し、課税事業者であった期間に発生した売掛債権が、免税事業者と

なった期間中に貸倒れとなった場合には、そもそも免税事業者は消費税

を申告しませんので、貸倒れにかかる消費税についても一切考慮されま

せん。

【生徒】

 うわ。ケチだなぁ。

【先生】

 さすがにそこまでは面倒は見てくれません。

【生徒】

 そしたら、課税事業者の期間中に貸倒れにしちゃえばいいってこと

ですね。

【先生】

 そう簡単にはいきません。税法上は貸倒れ処理できる場合がきちんと

きまっています。法人税法などで貸倒損失の用件が定められていますが、

消費税法でもこれに基づいて判断することとなります。

【生徒】

 やっぱりそう上手くはいかないか。

【先生】

 銀行が不良債権に困っていたとき、よく「有税償却」という言葉が聞かれ

ましたが、これは会計上は貸倒処理してしまうが、税法上の要件を満たし

ていないため、税金(法人税・地方税など)がかかってしまうということです。

 消費税も同様で、勝手に貸倒れとして処理しても要件を満たしていなけ

れば消費税の控除はできません。

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