週刊なるほど!消費税

納税義務(法人成り:6)

第245号 2007/11/05

★【先生】

引き続き、法人成りした場合の納税義務について、事例をあげて見ています。前回

までで4つの事例を見てきました。

 ☆【生徒】

 法人成りした場合には、節税効果が期待できるけど、納税義務の判定をするにあ

たっては、いろいろと注意することがあるという話ですよね。

★【先生】

 今回は、法人成りに限らず、法人を新たに設立した場合にも該当する話です。法人

設立後の免税期間が長くなる方法について見てみましょう。

☆【生徒】

 えっ!そんな方法があるのですか?お得じゃないですか。

★【先生】

 必ずしもお得とは限らないのですが・・・

法人を設立したは良いけれども、しばらく売上がたたないような場合に使えます。例え

ばお店が、法人成りに伴って店舗改装をして、しばらく営業できないような場合です。

営業再開の前後で決算期を一度区切ってしまうのです。

 以下の例で、法人成りした後の納税義務の有無を考えてみてください。

・平成19年以前から継続して事業をしている個人事業者である

・平成19年11月1日に法人成りした

・資本金 : 10万円

・事業年度 : 11月1日~10月31日

・平成19年11月1日から11月30日までは、店舗改装のため営業をしていない

・平成19年12月1日から営業を開始した

・月の課税売上高は110万円程度であり、毎月ほどんど変化はない

☆【生徒】

第1期と第2期は、基準期間もないし、資本金も1,000万円未満だから納税義務

はない。

第3期は・・・毎月の課税売上高は110万円程度とのことなので、第1期の売上が

110万円×12・・・じゃなくて、×11ヶ月で1,210万円となり、1,000

万円を超えるから納税義務がある。

 この法人は、第3期、つまり平成21年11月1日から納税義務があります。

★【先生】

 そうですね。では、第1期目を11月30日で区切ってしまって、事業年度を12月

1日から11月30日に変更したら、第3期と第4期の納税義務はどうなりますか?

☆【生徒】

 第1期目は平成19年11月1日から平成19年11月30日で課税売上高はゼロ円

となる・・・

 第3期の基準期間は第1期だけど、第1期は1年未満だから、1年に割り戻す計算

をする。第1期の課税売上高はゼロだから、ゼロを1年に割り戻してもゼロ。だから

第3期は納税義務なし。

 第4期の基準期間は第2期となって、第2期は1年間あるから110万円×12ヶ月

で、課税売上高が1,320万円となって、納税義務がある。

 第4期、つまり平成21年12月1日から納税義務があります・・・あっ、免税期間

が一月延びました!

★【先生】

 そうですね。法人成りでも新設法人でも、設立してしばらく売上がない、ということ

がはっきりしているようなときは、事業年度を調整することによって免税期間を延ばす

ことができるのです。

 今回の例ですと、第1期を平成20年2月29日までとすると、事業年度を11月

30日までとしたときよりも、さらに三月免税期間が延長されて、平成22年3月1日

から課税事業者となります。計算してみてください。

計算の方法が良くわからなければ、『納税義務(法人:2)』 ~ 『(法人:7)』

までを読み返して考えてみてください。詳しいことは、来週解説します。

 ただ、事業年度を区切るからには、事業年度は短くても、決算をすることになり、

法人税の申告が必要になります。ということは、そのための手間や会計事務所への

決算料など、本来必要ない経費が余分にかかることになります。

 また、将来の課税売上高は、あくまでも予想ですから、この事例のように常にうまく

いくとは限りません。見積りをあやまると、かえって免税期間が短くなってしまうこと

もあります。

☆【生徒】

 お得とは限らない、と言ったのはそのためですか。

★【先生】

 そうです。

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