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第66号 (1999年 9月) 

利益とお金(キャッシュフロー)
  
1. 利益とお金(キャッシュフロー)
★ .利益が出ているのにお金がない
 
 毎月の試算表をお客様にお渡しすると、よく

 「何でこんなに利益が出ているのにお金がないのでしょうか」

と言われます。
このからくりは試算表の「貸借対照表」と「損益計算書」を分析することにより解き明かすことができます。以下,事例に沿って説明します。
  
 2.事例・・・E社(サービス業)
 

 

<損益計算書>  (単位:千円)
 売 上 高   
 売上 原価
 売上総利益
 販売管理費
 営業 利益
 営業外収益
 営業外費用
 利   益 

    34,798
      635


   34,163
    29,946
    4,217
    1,145
    71
     5,291
  
<貸借対照表>

前期繰越

7 月 末

現 預 金
未 収 入 金
保 証 金
固 定 資 産
資 産 合 計

未 払 金
預 り 金
未 払 税 金
借 入 金
資 本 金
剰  余  金
負債資本合計

23,148
2,307
1,560
42,423


69,438

1,697
1,275
1,182
25,902
6,000
33,382
69,438

19,831
645
0
42,424


62,900

18
970
0
17,238
6,000
38,674
62,900
「前期繰越」は、前期末の残高です。
この場合、3月31日の残高です。

    

 3.解説
  


 4月から7月の4ヶ月で5,291千円の利益が出たのに対して,現預金は3月末に23,148千円あったものが7月末では19,831千円と、3,317千円も減っています。本来は、儲かった5,291千円現預金は増加しているはずです。

 「利益が出ているのにお金が減っている」、この原因を探ってみましょう。
  
 原因追求には貸借対照表の前期末残高と当月末残高の差額を見ていきます。

1 未収入金
  
前期末2,307千円の残高が当月末645千円になっています。
これはその差額1,662千円が当期に入金となったことを意味します。
当期に売上高があがってその代金が入金したのであれば、利益も現預金も同額増えるのですが,この場合は,前期に売上高が計上され,その代金が当期に入金されたということです。
つまり、当期の利益に関係なく増えたお金です。

2 保証金
 
前期末1,560千円あった保証金が、当月末ではゼロになっています。
これは当期に保証金が全額回収され,入金になったことを意味します。
これも利益に関係のない現預金の増加です。 

 
 以上の未収入金と保証金は、当期の利益にプラスする現預金の増加項目です。 つまり、当期の利益がゼロでもこの分の現預金は増加するということです。
 ですから当期の現預金の増減を考える場合、利益で増えた現預金にさらに加算することとなります。
  

 

3 未払金
 
前期末1,697千円あった未払金が当月末18千円です。
差額の1,679千円当期に未払金が支払われたことを意味します。
当期に外注費を計上してその代金を当期に支払えばその分利益が減少し,同額現預金も減少して両者の関係は同一となります。
  
しかし、前期に外注費の計上がされ,その支払が前期末に未払金として残り,それを当期支払った場合は,当期の利益に関係なく現預金は減少することとなります。

4 預り金
 
前期末の預り金残高は1,275千円で、当月末の残高は970千円です。
差額の305千円だけ当期に支払われたことになります。
これも利益に関係のない現預金の減少です。    

5 未払税金
 
 前期末の未払税金は,1,182千円で、当月末はゼロです。
前期分の税金が当期において全て支払われたことを意味します。
これも利益に関係のない現預金の減少です。

6 借入金
前期末の借入金は25,902千円で、当月末は17,238千円です。
差額の8,664千円が当期に銀行に返済した金額です。
これも、利益が出た出ないに関係なく出て行くお金です。
 

 
 以上の36が、当期の利益からマイナスする現預金の減少項目です。つまり、当期の利益がゼロでもこの分だけ現預金は減少するということです。
 ですから、当期の現預金の増減を考える場合、利益により増えた現預金からこの分マイナスする必要があるわけです。
 

   

 4.まとめ
   
 当期の当月までの利益は5,291千円ですから、本来ならば前期末から現預金は同額増えていなければなりません。
 しかし、以上説明したように

  A「利益に関係なく現預金が増える項目」
  B「利益に関係なく現預金が減る項目」

があります。
 ですから、利益と現預金の増減額は次のような関係にあることとなります。


現預金の増減額=利益+A−B


  実際にこの式を当てはめて見ましょう。

        
 
当月までの利益

5,291千円

A(利益にプラスされる入金)
 未収入金の入金      
 保証金の入金       

1,662千円
1,560千円

B(利益からマイナスする出金)
 未払金の支払     
 預り金の支払    
 税金の支払     
 借入金の返済

現預金の減少額    

▲ 1,679千円
 ▲  305千円
 ▲ 1,182千円
▲ 8,664千円


 ▲ 3,317千円

 この現預金の減少額は貸借対照表の現預金の前期繰越23,148円から当月末残高19,832円を引いた額と等しくなります。
 
この結果,「当月まで5,291千円利益を出したが,借入金の返済8,664千円がそれを上回り,結果として当期は現預金が3,317千円前期末に比べて減少してしまった」と説明できます。
 

 
今回はちょっと難しいテーマですが,じっくり考えて理解してください。
 「勘定あって銭足らず」の解明です。




公認会計士・税理士  井上 修 − 著

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