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第97号 (2002年5月)
売掛債権担保融資制度
損益分岐点
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売掛債権担保融資制度 |
★ 1.はじめに |
お金を金融機関から借りるにあたっての担保となる不動産もない中小企業にとっては、資金調達の方法は当然制限されたものとなっています。そこで、こういった中小企業の資金調達の間口を広げることを目的として創設されたのが、この売掛債権担保融資制度です。
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★ 2.基本的な仕組み |
要は、得意先に商品を売ったりして発生した売上代金回収の権利(売掛債権)を金融機関に預けて、その見返りとして融資を受けるといった仕組みです。
しかし、ただでさえ不良債権の追加発生に及び腰な金融機関が、回収不能になる可能性のある売掛債権を担保として積極的に融資するはずはありません。
そこで、担保となる売掛債権がもし回収不能になった場合に、借り入れた中小企業に代わって借入金の90%を金融機関に返済してくれる信用保証協会の保証制度が新たにできたのです。
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★ 3.対象となる売掛債権 |
借入れの担保として対象となる売掛債権は通常の事業者に対する売掛金、割賦販売代金債権、運送料債権、診療報酬債権、工事請負代金債権などです。
当然、売掛債権の相手先、つまり得意先の信用度が高ければ担保価値も高くなり、融資もスムーズに行くでしょう。公共工事の工事請負代金債権などは、相手先が国ですから超優良売掛債権と言えるでしょう。
この売掛債権の信用度によって借入金額の掛け目が決まります。掛け目は売掛債権の50%〜90%となっています。掛け目50%とは、1千万円の売掛債権であれば、最大500万円の借入ができるということです。
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★ 4.個別保証方式と根保証方式 |
個別保証方式は借入の都度、信用保証協会に借入申し込みをする方式で、根保証方式はあらかじめ1千万円といった借入限度額について保証を得ておき、1年間その限度内で反復して借入と返済ができる制度です。
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★ 5.売掛債権の担保の仕方 |
(1) |
中小企業が有する売掛債権を金融機関と信用保証協会に担保として譲渡する契約を結びます。
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(2) |
売掛債権の相手先である得意先に対して次のいずれかが必要となります。 |
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得意先から債権の譲渡を承諾したという書類をもらう方法 |
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得意先に債権の譲渡をしたということを通知する方法 |
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債権譲渡登記制度に基づいて登記する方法(根保証の場合) |
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★ 6.返済は売掛債権の回収で |
借入金の返済は担保となった売掛債権が回収されてあらかじめ決められた金融機関の返済用の口座に入金されることによってなされます。
ですから、借入期間はその売掛債権の回収までの期間となるわけです。
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★ 7.最後に |
売掛債権が回収できない場合は、信用保証協会が肩代りしてくれるといっても、その後、信用保証協会からの取立てがあることもお忘れなく。
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損益分岐点 |
損益分岐点とは損益がちょうどトントンとなる売上のことです。会社の営業活動がはたして採算がとれているかどうかを分析するものです。
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★ 1.変動費と固定費 |
損益がトントンになるとは売上高と総費用が同じということです。そこで損益分岐点を求めるためにまず総費用を変動費と固定費に分類します。
変動費
売上が増加すればその費用も増加し、売上が減少すればその費用も減少するような費用です。つまり売上の変動に比例する費用ということです。
たとえば、原材料費、外注加工費、商品仕入高などは変動費の代表的なものです。
固定費
売上の変動に関係なく発生する費用です。たとえば、支払利息、支払賃借料、減価償却費などです。
労務費、給料手当などは固定費である場合が多いのですが、歩合給、出来高給のものがあればその部分は変動費になります。
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★ 2.損益分岐点の公式 |
損益分岐点の公式は次の通りです。
損益分岐点は売上高=総費用 となるものです。
総費用を変動費と固定費に分類したのですから、
売上高=変動費+固定費
売上高−変動費=固定費 となります。
つまり売上高から変動費を差し引いた金額が固定費と同額になる点が損益分岐点なのです。
公式で「変動費/売上高」というのは変動費が売上高に占める割合つまり変動費率です。
「1−変動費率」は総費用の変動費以外の比率つまり固定費率ということです。
損益分岐点の公式は要するに売上高と総費用が同額のときに固定費を固定費率で割り戻して総費用と同額である売上高を求めているのにすぎません。
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★ 3.事例 |
販売業の場合のごく単純な事例でみます。
変動費 商品仕入高(正確には売上原価)のみとします。
変動費率 売上原価率が80%とします。
固定費 給料等、自社の固定費を集計します。ひと月当り合計で100万円とします。
損益分岐点は
100万円÷(1−80%)=500万円
つまりひと月当り500万円の売上で固定費をちょうどまかなえて損益がトントンとなるわけです。利益を出すには500万円以上の売上が必要と判断できます。
損益分岐点は利益計画にも活用できます。上記の事例でひと月当り50万円の利益を出す場合の売上高を求めるには固定費に利益を加えて
(100万円+50万円)÷(1−80%)=750万円
つまり50万円の利益を出すにはひと月当り750万円の売上が必要になるわけです。
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