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相続について

〔小規模宅地特例〕二世帯住宅_空室部分は貸付可能に。

二世帯住宅

 高齢化社会に伴い二世帯住宅を建築し、両親と子供が一つ屋根の下で暮らすケースが増えているようです。
この二世帯住宅には、大きく分けて2つのタイプがあります。

 それは、両親の居住エリアと子供の居住エリアとを建物内部で往来出来るタイプと往来出来ないタイプです。
最近では、お互いのプライバシーを尊重する理由から往来出来ないタイプも増えているようです。

ところで、このような居住用建物の敷地といえば、小規模宅地の特例が気になるところだと思います。

二世帯住宅と小規模宅地特例

実は、小規模宅地の特例と二世帯住宅の構造は、密接な関係があるのです。

それは、『同居』の捉え方に影響が出てくるのです。

二世帯住宅の構造と“同居”要件

 例えば、父親が土地を所有しており、その土地の上に二世帯住宅を建築し、その1階部分に父親が居住、2階部分に長男が居住し、各々別生計で生活していたと仮定します。
 その後、父親が死亡し、この二世帯住宅の宅地を長男が相続しました。
また、この長男は、いわゆる『家無き子』には該当しないものと仮定します。

この場合、この宅地に係る小規模宅地の特例は、どのようになるのでしょうか?

平成25年12月31日以前に発生した相続の場合

 上記の例のケースの場合、その相続が平成25年12月31日以前に発生した相続であれば、長男が相続した宅地について小規模宅地の特例を受ける為には、その長男が父親と『同居』している必要があります。

ここで、その二世帯住宅の構造が問題になってきます。

 つまり、父親の居住エリアである1階部分と長男の居住エリアである2階部分とを建物内部で往来出来るか否か?で『同居』の意味が違ってくるのです。

〔往来出来る場合〕

 建物内部において、1階部分と2階部分とを往来出来るタイプであれば、その長男は父親と同居しているものとして取り扱われ、他の一定の要件を満たせば、長男が相続した宅地について小規模宅地の特例を受ける事が出来ます。

〔往来出来ない場合〕

 建物内部において、1階部分と2階部分とを往来出来ないタイプであれば、その長男は父親と別居していたものとして取り扱われます。

従って、その相続した宅地については、小規模宅地の特例を受ける事は出来ません。

平成26年1月1日以後に発生した相続の場合

 上記の例のケースの場合、その相続が平成26年1月1日以後に発生した相続であったとしても、長男が相続した宅地について小規模宅地の特例を受ける為には、やはり父親と同居している事が要求されます。
 しかし、平成26年1月1日以後に発生した相続からは、その『同居』の判定基準が従来と異なっており、被相続人の居住の用に供されていた『一棟の建物』に居住していた者が、被相続人と同居していた者として取り扱われる事となったのです。
相69条の4③二イ

そして、その『一棟の建物』の捉え方は、その一棟の建物が『区分所有建物』に該当するか否かで異なってくるのです。
相令40条の2⑩

〔区分所有建物である場合〕

 被相続人の居住の用に供されていた一棟の建物が、区分所有建物である場合には、その被相続人の居住の用に供されていた部分が『一棟の建物』に該当します。
 つまり、『被相続人の居住エリア=一棟の建物』という事になりますので、被相続人の居住エリアに起居していた者が、被相続人と同居していた者となるのです。

 先の例でいえば、父親の居住エリアである1階部分が『一棟の建物』という事になりますので、その1階部分に長男が起居していれば、その長男は、『被相続人の居住の用に供されていた一棟の建物に居住していた者』として、父親と同居していたものとして取り扱われます。

 反対に1階部分に起居していなければ、その長男は父親と別居扱いとなり、その相続した宅地について小規模宅地の特例を受ける事は出来ない事になります。

〔区分所有建物以外である場合〕

 被相続人の居住の用に供されていた一棟の建物が、区分所有建物以外である場合には、被相続人又はその被相続人の親族の居住の用に供されていた部分が『一棟の建物』に該当します。

 つまり、被相続人の親族の居住部分も『一棟の建物』に該当しますので、その親族が自分の居住部分に起居していれば、その親族は『被相続人の居住の用に供されていた一棟の建物に居住していた者』として、被相続人と同居していたものとして取り扱われます。

 先の例でいえば、長男が自分の居住エリアである2階部分に起居していれば、被相続人である父親と同居していた者として、その相続した宅地について小規模宅地の特例を受ける事が出来るという訳です。

二世帯住宅と空室の貸付

 上記のとおり、平成26年1月1日以後に発生した相続からは、二世帯住宅における被相続人との同居の有無を判定するにあたり、構造要件が撤廃され、被相続人の居住エリアと相続人の居住エリアとを建物内部で往来出来なくてもその被相続人の居住の用に供されていた一棟の建物が、区分所有建物以外であれば、相続人が自分の居住エリアに起居していれば、同居要件を満たせる事となりました。

空室の貸付

 先の例でいえば、父親の居住エリアである1階部分と長男の居住エリアである2階部分とを建物内部で往来出来ず、完全に分離独立していたとしても当該建物が区分所有建物以外であれば、長男が2階部分に居住している限り、被相続人である父親との同居要件を満たす事になります。

そうなると、1階部分は空室となってしまい、そのままでは少々勿体ない気もします。

そこで、その空室となった1階部分を第三者に賃貸するケースもあると思います。

小規模宅地の特例と居住継続要件

 先に挙げた例のように同居親族に該当する長男が相続した宅地について、小規模宅地の特例を受ける為には、一定の要件を満たす必要があり、その要件の中に『居住継続要件』というものがあります。

〔居住継続要件〕

 これは、その相続開始時からその申告期限まで、その被相続人の居住の用に供されていた『一棟の建物』にその宅地を相続した者が居住を継続する必要がある、という要件です。

一棟の建物への居住継続と賃貸

 先に被相続人の居住の用に供されていた『一棟の建物』の範囲は、その一棟の建物が、区分所有建物であるか否かで異なってくると述べましたが、これは、居住継続要件にも大きく影響してくるのです。

区分所有建物である場合

 当該建物が、区分所有建物である場合には、『一棟の建物』とは、『被相続人の居住の用に供されていた部分』を指します。
という事は、その宅地を相続した者が居住を継続すべき『一棟の建物』は、その被相続人の居住の用に供されていた部分という事になります。

 よって、当該建物が区分所有建物である場合には、空室になったからといって、かつての被相続人の居住部分をその相続に係る相続税の申告期限を経過する前に賃貸に出してしまうと、その宅地については、小規模宅地の特例を受けられない事になってしまいます。

区分所有建物以外の場合

 当該建物が、区分所有建物以外の場合には、『一棟の建物』とは、『被相続人又はその被相続人の親族の居住の用に供されていた部分』を指します。
 つまり、当該建物に居住していた親族の居住部分も『一棟の建物』に該当します。

よって、今までどおり自分の居住部分に起居していれば、居住継続要件を満たす事が出来ます。

 という事は、空室となっているかつての被相続人の居住部分をその相続に係る相続税の申告期限を経過する前に賃貸に出しても、その宅地については、小規模宅地の特例を受ける事が出来るのです。

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