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相続について

〔小規模宅地特例〕特別養護老人ホームと転居

特別養護老人ホーム

 既報のとおり、平成25年度税制改正により、平成26年1月1日以後に発生した相続・遺贈から要介護認定、又は、要支援認定を受けていた被相続人が、介護を受ける為に老人ホーム等へ入居した為、空き家となった宅地に対する小規模宅地特例の適用要件が緩和され、一定の要件を満たせば、空き家となっていた宅地であっても小規模宅地特例の適用対象となります。

 この特例対象となる老人ホーム等の施設は、種々ありますが、その中に『特別養護老人ホーム』があります。

特別養護老人ホームとは?

 特別養護老人ホームとは、社会福祉法人や地方自治体が運営主体となっている公的な施設です。

 この特別養護老人ホームへは、誰でもすぐに入居出来る訳ではありません。
 入居対象者は、65歳以上の者で、要介護1~5の認定を受けており、常に介護が必要な状態で自宅における介護が困難な者が対象となっています。
 よって、寝たきりや認知症等の比較的重度で緊急性の高い者の入居が優先となります。

 また入居に要する費用は、民間の有料老人ホームと比較すると低価格であり、入居を希望する者が非常に多いのが特徴です。

入居待ちが長い

 上記の事情から、特別養護老人ホームへの入居を希望したとしても実際に入居出来るまでの待ち期間が非常に長く、早くて数ヶ月、長い場合には10年程を要するケースも珍しくないようです。

親戚宅等への転居

 そこで、事情によっては、実際に入居出来るまでの間、自宅を出て親戚等の家に転居する場合もあるようです。

 例えば、高齢となった母親と独身の長男の二人暮らしの家庭があったとします。
 
 今まで母親の面倒は、長男が看てきましたが、長男が仕事の関係で一時的に外国へ引っ越す事になりました。

 そこで、母親を特別養護老人ホームへ入居させる事としたのですが、待ち期間が非常に長く、無事に入居が決まったもののその入居可能日は、長男の外国への出発日の後になってしまいました。

 やむを得ないので長男の外国への出発日から特別養護老人ホームへの入居日までの間、一時的に母親を親戚宅へ預ける事としました。

 つまり、母親が特別養護老人ホームへ入居する直前において『自宅に居住していない期間』が生じてしまう事になるのです。

親戚宅等への転居と小規模宅地特例

 この老人ホーム等への入居に係る小規模宅地特例は、被相続人の自宅について、『その被相続人が、老人ホーム等へ入居する直前までその被相続人の居住の用に供していた』ことをその前提としています。

 ところが、上記の例のように特別養護老人ホームへ入居する直前において、自宅に居住していない期間が生じてしまった場合、この自宅敷地に対する小規模宅地特例は適用されるのでしょうか?

適用の可否は事実認定

 このようなケースの場合における小規模宅地特例の適用可否については、事実認定によるものと思われます。

 つまり、その被相続人の生活の本拠が、自宅から親戚宅等へ移転していたか否か?がその争点になると思われます。
 事実認定の結果、その被相続人の生活の本拠が、親戚宅等へ移っていたとなれば、その自宅敷地に対する小規模宅地特例の適用は不可となるでしょう。

 例えば、特別養護老人ホームへの入居日が決まっておらず、長期間に渡って親戚宅へ身を寄せていれば、その被相続人の生活の本拠は、親戚宅等へ移転したものとされ、その自宅敷地への小規模宅地特例の適用は否認されることになると思われます。

 一方、既に特別養護老人ホームへの入居日が確定しており、親戚宅への転居が一時的なものであると認められれば、その被相続人の生活の本拠は親戚宅等へ移転していないものとして、その自宅敷地に対する小規模宅地特例の適用が認められるものと思われます。

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