婚姻届出と父母の同意
婚姻届出と父母の同意
民法上の婚姻可能年齢は、『男は満18歳、女は満16歳』と定められています。(民法第731条)
よって、この年齢に達した男女は、婚姻が可能なのですが、その婚姻届出に父母の同意が必要となる場合があります。
それは、未成年者が婚姻する場合です。(民法第737条)
父母の同意
上記のとおり未成年者が婚姻する場合には、その父母の同意が必要となります。
では、この同意というものは、父母の両方から得なければならないのでしょうか?
答えは『いいえ』です
父母の同意はいずれか一方のみでよい
例えば、未成年である娘の結婚について父親が反対し、母親が賛成している場合には、母親の同意さえ得られれば、婚姻届出は可能となります。
これは、実務上の実効性を配慮したものと思われます。
つまり、父母の一方が家出や災害等で行方不明になっている場合や父母の一方が既に死亡している場合、或いは、父母の一方が精神的病で意思表示が出来ないといった場合には、父母の双方からの同意を得る事は不可能です。
そうなると未成年者は、成年になるまで婚姻する事が出来なくなるという不都合が生じるからです。
なお、上記の理由で父母の双方から同意を得る事が出来ない場合、つまり、父母の双方が行方不明や既に死亡している場合等は、同意は不要となります。
同意の方法
未成年者が婚姻する場合の父母の同意の方法は、一般的には、その提出する婚姻届出書に婚姻に同意する旨を附記し、署名・押印をします。(戸籍法第38条)
婚姻届出書を備えている市区町村役場によって多少の違いがあるかもしれませんが、具体的には、婚姻届出書の『その他』の欄に附記し、署名・押印する場合が多いようです。
なお、上記の『その他』欄への附記、署名・押印に代えて、同様の内容である『同意書』を別途提出する方法でも構いません。
婚姻届出書の提出と受理
民法上の夫婦となる為には、市区町村役場に婚姻の届出をし、受理されなければなりません。
(民法第739条)
不備がある婚姻届出は受理されない
市区町村役場では、婚姻届出に不備が無い事を確認した後でなければ、その婚姻届出を受理してはならない事になっています。(民法第740条)
しかし、何らかの手違いにより不備がある婚姻届出が誤って受理されてしまいますと、一応その婚姻届出は、有効なものとなりますが、後で婚姻取り消しの対象になってしまいます。
父母の同意無しは取り消しの理由にならず
婚姻可能年齢等の婚姻条件に違反した婚姻は、婚姻取り消しの対象となります。
ところが、未成年者が婚姻する場合に要求されている父母の同意については、その同意が無いまま婚姻届出が受理されてしまうと、後でこれを取り消す事は出来なくなってしまうのです。
何故か?といいますと、条件に違反した婚姻の取り消しを定めている民法744条では、その取り消しの対象となる条件違反の中に『未成年者が婚姻する場合の父母の同意』を挙げていないからなのです。
取り消しの対象となる条件違反
婚姻取り消しの対象となる条件違反は、下記のとおりです。
■結婚可能年齢(民法第731条)
■二重結婚の禁止(民法第732条)
■女性の再婚禁止期間(民法第733条)
■近親婚の禁止(民法第734条、735条、736条)
上記のとおり、婚姻取り消しの対象となる条件違反の中には、未成年者が婚姻する場合の父母の同意を要求する民法第737条は、含まれていないのです。
よって、未成年者が提出する婚姻届出にその父母の同意が無くても受理されてしまえば、もはやこれを取り消す事は出来なくなるのです。