成年被後見人の結婚
成年被後見人の結婚
認知症や知的障がい等によって、自分の行為についての判断能力を欠く常況にある者を法的に保護する為の制度の一つに成年後見制度があります。(民法第7条)
この制度により後見開始の審判を受けた者を『成年被後見人』と呼び、この成年被後見人には、その保護者として成年後見人が付けられます。(民法第8条)
また、成年後見人は、法定代理人として成年被後見人が行う一切の法律行為を代理します。
成年被後見人の取引
自分の行為についての判断能力を欠く常況にある成年被後見人が、予想外の損害を被るのを防止する為に民法においては、成年被後見人が行った法律行為は、取り消せる旨を定めています。(民法第9条)
〔法律行為とは?〕
民法上では特に定義されている訳ではありませんが、一般的には、次のように解釈されているようです。
先ず、ある権利の発生原因(これを法律要件と言います)があります。
例えば『土地を売却したい』といった意思表示です。
そして、この意思表示が実現した場合、つまり、土地が売却出来た場合には、買主に対しその土地の売却代金を請求する
権利が発生します。
この売却代金請求権を『法律効果』と言います。
これらの『法律要件』と『法律効果』を発生させる一連の行為を『法律行為』と呼びます。
一般的には、様々な『契約』が法律行為そのものと言えるでしょう。
日常生活に関する行為は取り消せない
上記のとおり、成年被後見人が行った法律行為、つまり様々な契約は、これを取り消す事が出来ます。
しかし、日用品の購入等の日常生活に関する法律行為は、取り消す事は出来ないのです。
これは、本人保護の理念や本人の自己決定権の尊重等に配慮しての事と考えられています。
従って、成年被後見人が行った法律行為で取り消す事が出来るものは、“非日常的”な取引に限定される事になります。
例えば、不動産や有価証券の売買取引や定期預金の解約等がその典型例と言えます。
婚姻は?
では、成年被後見人が行う婚姻はどうなるのでしょうか?
婚姻という行為も立派な法律行為であり、また、非日常的と言えます。
婚姻という法律行為を成年被後見人が行う以上、法定代理人である成年後見人がこれを代理するのでしょうか?
答えは『いいえ』です。
婚姻は代理されない
成年被後見人が婚姻する場合には、その法定代理人である成年後見人の同意を要しません。(民法第738条)
つまり、婚姻という法律行為がたとえ成年被後見人によって行われるとしても、他人である成年後見人がこれを代理するわけにはいかないからです。
考えてみれば、当然ですね。