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相続について

制限能力者の取引

制限能力者

 民法上の制限能力者は、下記の4種類があります。
   ■未成年者
   ■成年被後見人
   ■被保佐人
   ■被補助人

未成年者

 民法上、成年者とは満20歳以上の者をいいます。(民法第3条

 従って、未成年者とは満20歳未満の者を指します。

婚姻すると成年者とみなされる

 満20歳未満の者であっても婚姻すると成年者とみなされます。(民法第753条

 従って、親権者である親の同意を得ずとも単独で有効な法律行為(契約)を行う事が可能となります。

但し、民法上だけの話である

 満20歳未満の者が婚姻する事により成年者とみなされるのは、民法上のみの話です。

 つまり、いくら民法上で成年者とみなされるといっても20歳未満であれば、喫煙や飲酒は禁止されるし、公職選挙権もありません。
 これらは、民法以外の法律の話なので、民法上の“みなし成年者”の効力は及ばないのです。

満20歳になる前に離婚すると?

 20歳未満の者が婚姻すると、民法上は成年者とみなされる事は述べました。

 では、20歳未満で婚姻し、成年者とみなされた者が、満20歳に達する前に離婚してしまったらどうなるのでしょうか?
 再び未成年者扱いに戻ってしまうのでしょうか?

 答えは『いいえ』です。

 婚姻する事により成年者とみなされた20歳未満の者は、満20歳に達する前に離婚したとしても再び未成年者扱いに戻るのではなく、引き続き成年者として扱われ、単独で有効な法律行為を行う事が可能なのです。

未成年者には法定代理人が付けられる

 未成年者には、親権者である父母が法定代理人となります。(民法第818条
 父母が既に死亡している場合等は、未成年後見人が法定代理人となります。(民法第838条

後見制度・補佐制度・補助制度

 本人の判断能力の程度に応じて、3つの制度があり、家庭裁判所の審判によりその本人について保護者として成年後見人・保佐人・補助人が任命されます。

 また、この保護者である後見人等に保護される者を成年被後見人・被保佐人・被補助人といい、、民法上は、事理に対する弁識能力の程度の差に応じて次のように定義されています。

 ■『成年被後見人』
   精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状況にある者(民法第7条
    ⇒言うなれば「弁識能力がしっかりしているときが殆ど無い」者です。

 ■『被保佐人』
   精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者(民法第11条
    ⇒言うなれば「弁識能力がだいぶ衰えてきたが、しっかりしているときもある」者です。

 ■『被補助人』
   精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者(民法第14条
    ⇒言うなれば「弁識能力が以前と比べると衰えてきた」者です。

未成年者の取引

 未成年者が行った取引については、下記のように区分されます。

取引を行った者が本人である場合

 法定代理人の同意の有無によって、下記のように区分されます。

法定代理人の同意が無い場合

 民法第4条『未成年者に不利益にならない行為』、民法第5条『未成年者が法定代理人から自由処分を許可された財産』、民法第6条『未成年者が法定代理人から許可された営業』に該当する場合には、その未成年者が行った取引は、有効となります。

 逆にこれら民法第4条5条6条に該当しない場合には、その未成年者が行った取引は、取り消す事が可能です。

法定代理人の同意がある場合

 未成年者が行った全ての法律行為は、有効となります。

取引を行った者が法定代理人である場合

 法定代理人が行った法律行為は、全て有効となります。

成年被後見人の取引

 成年被後見人が行った取引については、下記のように区分されます。

取引を行った者が本人である場合

 その取引が、民法第9条但し書きの取引(以下、『日常生活行為』といいます)に該当するか否かにより下記のように区分されます。

〔日常生活行為以外の行為〕

 この場合、その取引は取り消せます。

〔日常生活行為〕

 この場合、その取引は有効となります。

取引を行った者が法定代理人である場合

 法定代理人が行った法律行為は、全て有効となります。
 

被保佐人の取引

 被保佐人が行った取引については、下記のように区分されます。

取引を行った者が本人である場合

 保佐人の同意の有無によって、下記のように区分されます。

〔保佐人の同意無し〕

 民法第12条に定める取引(保佐人の同意が必要な取引)に該当する場合には、その取引は取り消せます。
 一方、その取引が、民法第12条に定める取引に該当しない場合及び日常生活取引である場合には、その取引は、有効となります。

〔保佐人の同意あり〕

 保佐人の同意がある場合には、全ての法律行為が有効となります。

取引を行った者が保佐人である場合

 保佐人には、法定代理権がありません。
 よって、保佐人に代理権が与えられているか否かにより、下記のように区分されます。

〔代理権を与えている行為〕

 保佐人に代理権が与えられた取引を保佐人が行った場合には、その取引は有効となります。

〔代理権を与えていない行為〕

 保佐人が代理権を与えられていない取引を行った場合には、その取引は無効となります。

 “無効”である為、その取引は、初めから無かったものとされます。
 つまり、『取り消せるか否か?』という以前の問題という訳です。

被補助人の取引

 被補助人が行った取引については、下記のように区分されます。

取引を行った者が本人である場合

 補助人の同意の有無によって、下記のように区分されます。

〔補助人の同意無し〕

 補助人に対する同意権の付与は、任意です。

 よって、補助人に同意権を付与している取引を補助人の同意無しに被補助人が行った場合には、その取引は取り消せます。

 一方、補助人に同意権を付与していない取引であれば、補助人の同意無しに被補助人が行ったとしてもその取引は、有効となります。

〔補助人の同意あり〕

 補助人の同意がある場合には、全ての法律行為が有効となります。

取引を行った者が補助人である場合

 補助人には、法定代理権がありません。
 よって、補助人に代理権が与えられているか否かにより、下記のように区分されます。

〔代理権を与えている行為〕

 補助人に代理権が与えられた取引を補助人が行った場合には、その取引は有効となります。

〔代理権を与えていない行為〕

 補助人が代理権を与えられていない取引を行った場合には、その取引は無効となります。

 “無効”である為、その取引は、初めから無かったものとされます。
 つまり、『取り消せるか否か?』という以前の問題という訳です。

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