婚姻の取り消し
婚姻はどういう場合に取り消される?
民法上、婚姻の取り消しは、民法第744条から第747条の規定によってのみ取り消す事が出来る旨を定めています。
■(第744条)条件違反の婚姻の取り消し
■(第745条)年齢違反した婚姻が取り消せない場合
■(第746条)再婚禁止期間に違反した婚姻が取り消せない場合
■(第747条)脅迫等されてした婚姻の取り消し
“無効”と“取り消し”の違いは?
ところで、民法上、婚姻に関しては“婚姻の無効”に関する規定(民法第742条)がありますが、この“婚姻の無効”と“婚姻の取り消し”は、どのような違いがあるのでしょうか?
〔婚姻の無効〕
婚姻の無効は、婚姻当初に遡ってその婚姻が無かったものとされます。
〔婚姻の取り消し〕
婚姻が取り消されてもその取り消しの効力は、過去には遡りません。(民法第748条1項)
つまり、その婚姻は『取り消されるまでは有効』となり、『取り消された以降は無効』となるのです。
(第744条)条件違反の婚姻の取り消し
民法の第731条から第736条においては、婚姻可能年齢・二重結婚の禁止・再婚禁止期間・近親婚の禁止を定めていますが、これらに違反した婚姻は、次の者がその取り消しを裁判所に請求することが出来ます。
〔取り消しを請求出来る者〕
■その婚姻当事者
■その親族
■公益代表者としての検察官
但し、検察官は、当事者の一方が死亡した後には、取り消し請求をする事が出来ません。
また、二重結婚を禁止した第732条に違反した婚姻及び再婚禁止期間を定めた第733条に違反した婚姻ついては、それぞれ次の者がその取り消しを裁判所に請求することが出来ます。
〔二重結婚について取消請求を出来る者〕
■二重結婚をした本人
■その二重結婚をした者の先の結婚による配偶者
■その二重結婚をした者の後の結婚による配偶者
〔再婚禁止期間違反について取消請求を出来る者〕
■再婚禁止期間を無視して再婚した本人(こちらは当然女性です)
■再婚禁止期間を無視して再婚した者の前の結婚による配偶者(こちらは当然男性です)
■再婚禁止期間を無視して再婚した者の後の結婚による配偶者(こちらも当然男性です)
(第745条)年齢違反した婚姻が取り消せない場合
民法上、男性は満18歳、女性は満16歳に達すれば、婚姻が可能となります。(民法第731条)
この婚姻可能年齢に違反した婚姻は、取り消しの対象となるのですが、その当事者が婚姻可能年齢に達した後は、その婚姻の取り消しを請求することは出来なくなります。
婚姻可能年齢達してしまった後は、今更取り消しても仕方が無いからです。
本人だけは3ヶ月間の猶予あり
但し、婚姻可能年齢に達しないで婚姻した本人だけは、婚姻可能年齢に達した後も3ヶ月間に限り、その婚姻の取り消しを請求することが出来ます。
でも追認したら取り消せない
3ヶ月間の猶予期間があるとはいえ、婚姻可能年齢に達した後にその本人がその婚姻を承認した場合には、たとえ婚姻可能年齢に達してから3ヶ月以内だったとしても、もはや取り消す事は出来なくなります。
(第746条)再婚禁止期間に違反した婚姻が取り消せない場合
民法では、女性に対し離婚等により前の結婚が終了してから6ヶ月を経過した後でなければ、再婚してはならない旨を規定しています。(民法第733条)
しかし、前の婚姻が死別や離婚、或いは婚姻の取り消しにより終了してから6ヶ月経過してしまった場合には、その婚姻を取り消す事は出来なくなります。
また、女性が再婚禁止期間を無視して再婚した後に妊娠した場合もその婚姻を取り消す事は出来なくなります。
元々この再婚禁止期間の規定は、再婚によって生まれる子供が、前の婚姻による夫の子供か?或いは、今の婚姻による夫の子供か?が不明になるのを防止する為に定められた規定です。
よって、その禁止期間が経過してしまったり、再婚後に妊娠して父の不明が現実に生じてしまった後では、今更その婚姻を取り消しても仕方が無いのです。
(第747条)脅迫等されてした婚姻の取り消し
詐欺又は脅迫によって婚姻をした者は、その婚姻の取り消しを裁判所に請求することが出来ます。
但し期間制限あり
この取り消し請求権は、その騙された者がその詐欺に気が付いてから、或いは、その脅迫から逃れてから3ヶ月を経過すると消滅してしまいます。
また、たとえ3ヶ月を経過していなくとも、その婚姻を本人が承認してしまった場合もその取り消し請求権は消滅してしまいます。