夫婦の同居義務と扶助義務
夫婦の同居義務と扶助義務
婚姻が成立し晴れて夫婦となったからには、お互いに協力し助け合うのが当然だと思いますが、民法ではこの点についてもきちんと条文で定められているのです。
民法では、夫婦の協力扶助義務について、下記のように定めています。
■(民法第752条)夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。
3つの事柄を定めている
上記の民法第752条の条文をよくみると次の3つの事柄を定めていることが読み取れます。
■同居
■協力
■扶助
これらは、それぞれどのような内容を要求しているのでしょうか?
夫婦は同居しなければならない
先ず一つ目として、夫婦は同居すべき事を定めています。
これは読んだとおり『夫婦は互いに同居しなければならず、別居ではいけない』という意味です。
しかし強制力は無い
しかしこの規定は、倫理的な規範を示したものであり、絶対的な強制力は無いのです。
但し、強制力は無いといっても正当な理由無しに同居しないのは、離婚の原因となりますので注意が必要です。
同居する場所
夫婦が同居する場所は、夫婦の話し合いで決めます。
もし決まらない場合には、夫婦の一方から相手方の住所地域にある家庭裁判所に調停又は審判を求めて決める事になります。
通常、夫婦は同居するでしょうから夫婦の住所地(自宅住所)が同居する場所となるでしょう。
夫婦は協力しなければならない
二つ目として、夫婦は互いに協力すべき事を定めています。
これは『夫婦は互いに協力し合って結婚生活を送らなくてはいけない』という意味です。
例えば、夫が妻に家事の全てを強制的に押し付けてはならないし、夫が生活費を全く出さないという
事があってはならないのです。
夫婦は扶助し合わなければならない
三つ目として、夫婦は互いに扶助し合うべき事を定めています。
これは、『夫婦の一方が扶助を必要とするような状態になった場合には、もう片方が自分と同等の生活を送る事が出来るように援助してあげなければならない』という意味です。
例えば、妻が病気や怪我で動けなくなってしまったら、夫は妻に対し、夫と同程度の生活を送れるように生活費を出したり、面倒をみてあげなければならないのです。
夫婦はたとえ一切れのパンであっても分け合ってお互いに同じ水準の生活を保障する必要がある、ということです。
扶助義務を履行しないときは?
扶助義務を履行しない場合には、相手方の住所地域にある家庭裁判所に対し、調停や審判を求める事になります。
なお、家庭裁判所や調停委員会は、調停や審判に至るまでの間、必要な処分をし、命ずる事が出来ます。
そうしないと、例えば『調停中に申立人が餓死してしまった』という困った事態が生じてしまうからです。