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相続について

夫婦の財産関係

夫婦の財産関係

 民法上、夫婦の財産関係は大きく分けて次の2つがあります。
 
  ■法定財産制(民法第760条、第761条、第762条
  ■財産契約制(民法第756条
  

法定財産制

 日本における夫婦の財産関係としては、殆どはこの法定財産制によっているといえます。

 この法定財産制では、大きく分けて次の3点について定められています。

  ■婚姻生活の費用負担(民法第760条) 
  ■日常の家事費用に係る連帯責任(民法第761条
  ■財産の帰属(民法第762条

 では、それぞれどのような内容なのかみていきましょう。

婚姻生活の費用負担民法第760条

 夫婦の婚姻生活の費用負担は、夫婦各々の資産、収入、家事労働その他一切の事情を考慮して分担すべき事とされています。

 『婚姻生活の費用』とは、具体的には、夫婦に係る衣食住の費用や教育費、医療費、冠婚葬祭費など日常生活を営んでいく上で必要となる一切の費用が婚姻生活の費用と言えます。

 なお、夫婦に二十歳未満の子がある場合には、その子に係る同様の費用も婚姻生活の費用と言えます。

〔二十歳未満の子の扶養義務〕

 未成年の子は、その父母が親権者となって、その子供を保護する事となっています。(民法第819条

また、親権を行う者(父母)は、子を監護及び教育をする権利を有し、義務を負う事とされています。(民法第820条

 よって、未成年の子がいる夫婦には、自分達夫婦と同等の生活を子に与える義務があると言えますので、その子が日常生活を営んでいく上で必要となる一切の費用も夫婦の婚姻生活の費用と言えるのです。

〔家事労働の度合い〕

 条文上でははっきりと表れていませんが、家事労働の度合いは、婚姻生活費の分担割合を決める際に考慮されるべき重要な要素と言えます。

 極端な例を言えば、家事労働の全てを妻が負担しているのであれば、生活費用は全額を夫が負担すべきという意味です。

〔分担割合〕

 婚姻生活費用の実際の分担割合は、夫婦の話し合いで決めます。

 話し合いで決まらない場合には、夫婦の一方から夫又は妻の住所地域にある家庭裁判所に調停又は審判を申し立てて決めて貰う事になります。

日常の家事費用に係る連帯責任民法第761条

 夫婦は、その一方が日常の家事に関して第三者と取引をして債務が生じた時には、夫婦のもう一方は、その債務について連帯して責任を負う事とされています。

 但し、予め夫婦の一方が第三者に対し、『自分は連帯責任を負わない』という旨を予告していた場合には、その一方の者は、連帯責任を免れる事が出来ます。

 つまりは、『夫婦は、日常の家事に関連して発生した債務については、夫婦二人で連帯責任を負いなさい』という事です。

 例えば、妻がクレジットカードで日常の買い物をした場合には、そのカード代金の支払債務について、夫も連帯責任を負う、という訳です。

 ここでポイントとなるのは、何も夫婦だからといって『無制限に連帯責任を負え』と言っている訳ではなく、あくまでも『日常の家事』に関連して発生した債務についてのみ連帯責任を要求しているという点です。

〔日常の家事とは?〕

 では、何処までが『日常の家事』と言えるのか?が問題になると思います。

 しかし、この点については、各家庭の習慣や経済状況等によって様々なので一概には言えないのです。

 とは言え、『高額な貴金属や宝石を購入した』とか『不動産を購入した』等といった取引は、日常の家事とは言えないでしょうから、この場合には、夫婦の一方はその債務に対する連帯責任を免れるでしょう。

財産の帰属民法第762条

 夫婦の一方が、婚姻前から所有していた財産と婚姻中に自己の名で得た財産は、『特有財産』として、その各々個人に帰属するものとされています。

 婚姻中に自己の名で得た財産とは、自分の収入で買った財産や自分が相続人として相続した財産、自分が受贈者として贈与された財産等を指します。

 これらの特有財産は、その帰属がはっきりとしているので、各々個人に帰属するものとされています。

 これに対し、夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、夫婦二人の共有に属するものと推定する事となっています。

〔専業主婦の特有財産は?〕

 上記の考え方を単純に捉えると、専業主婦等は自分名義の収入が無い為、相続や贈与により財産を取得した場合を除き、自分名義の財産が増えないという不公平が生じてしまいます。

 この不公平については、現在のところ離婚の際の財産分与(民法第768条、第771条)や配偶者の相続権(民法第890条、第900条、904条の2)により吸収していると考えられています。

財産契約制

 上記までで述べてきた『法定財産制』と異なる取り扱いを主張する為には、夫婦間において『夫婦財産契約』を締結し、これを登記する必要があります。

夫婦財産契約とは?

 『夫婦財産契約』とは、上記で述べてきた『婚姻生活の費用負担(民法第760条)』、『日常の家事費用に係る連帯責任(民法第761条)』、『財産の帰属(民法第762条)』、その他、財産の管理者や財産の管理方法等について、民法の定めと異なる定めを夫婦間で取り決める契約をいいます。

手続き期限と登記

 
この夫婦財産契約は、婚姻届出書を提出する前までに締結し、登記しなければなりません。(民法第756条

 そうしないと、夫婦財産契約が存在する旨を夫婦の相続人及び第三者に対し主張し、対抗する事が出来ませんので注意が必要です。

 民法上の婚姻関係が成立した後では、手遅れという訳です。

〔登記先は?〕

 婚姻後に夫の姓を名乗るのであれば、夫の住所地の、妻の姓を名乗るのであれば、妻の住所地の法務局・地方法務局又は、その支局・出張所に登記する事になります。

契約内容の変更は出来ない

 夫婦財産契約の内容は、婚姻届出書を提出後においては、原則としてその内容を変更する事は出来ません。(民法第758条1項

 よって、契約内容は慎重に吟味する必要があります。

しかし例外もある

 上記のとおり、夫婦財産契約の内容は、婚姻届出書を提出後においては、変更する事は出来ません。

 しかし、当初の夫婦財産契約において、『夫婦の一方が他方の者の財産を管理する』という契約になっている場合において、その財産管理者の管理の失当により他方の者の財産が危うくなったときは、その他方の者は、自分自身で財産を管理する旨を家庭裁判所に請求する事が出来ます。(民法第758条2項

 例えば、夫婦財産契約の締結時において、夫が妻に対し『君の財産管理は、僕に任せておきたまえ』と大口を叩いてその旨の契約をしておきながら、実際のところ、財産管理に失敗し妻の財産が危険に晒された場合には、妻は、『自分の財産は自分で管理します』という旨を家庭裁判所に請求する事が出来る、という訳です。

変更した旨の登記が必要

 財産の管理者を変更した場合には、その旨の登記をしないと夫婦の相続人や第三者に対し、その旨を主張し対抗する事が出来ませんので注意が必要です(民法第759条

日本では普及していない

 夫婦財産契約を締結すると、財産の帰属がはっきりしますので、離婚の際の財産分与で揉める事が無くなりますし、財産の運用で失敗した際の責任の所在もはっきりしていますので、財産を巡る夫婦間トラブルを回避出来るという長所があります。

 しかし、手続きの厳格さや煩雑さ、また日本人の習慣に合わないといった理由で、日本では殆ど普及していないのが実情です。

 ドライな制度なので、日本人には馴染まないのかもしれませんね。

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