非嫡出子の認知
非嫡出子
民法上の婚姻関係に無い男女間に生まれた子を非嫡出子と呼びます。
この非嫡出子について、民法第779条においては『嫡出でない子は、その父又は母がこれを認知することができる』と定めています。
この婚姻外で生まれた子の取り扱いは、おおよそ次の3パターンに分かれます。
1.父母の分からない子
2.母が自分の子だと認知した子
3.父も自分の子だと認知した子
父母の分からない子
これは、置き去りにされた幼児等が該当します。
出生届もされぬまま置き去りにされてしまった幼児のように父母が不明な場合には、姓も籍も別個に新しく作る事になります。
当然、両親が不明なので、誰からも扶養されず、遺産の相続も出来ない事になります。
但し、実の父母が判明し認知されれば、父母の籍に入り、父母からの扶養を受け、父母の遺産を相続する事が出来るようになります。
母が自分の子だと認知した子
通常、母子関係の場合は、出産の事実があれば母子関係が成立すると考えられていますので、母が出生届をすれば認知したものとされます。
この場合、母の籍に入り、母の姓を名乗り、母の親権で保護され、母の扶養を受け、母の遺産を相続する事になります。
但し、父親が不明なので、父親に扶養を求めたり、父親の遺産を相続する事は、出来ません。
父も自分の子だと認知した子
父からも『自分の子です』と認知されれば、その父に対し扶養を求める事が出来ます。
一般的に父親に認知されてもその子の姓や籍は、母親と同じままで、母親の親権によって保護されるケースが多いようです。
もっとも家庭裁判所の許可を得て、父の姓を名乗り、父の籍に入り、父母の同意の下父を親権者にする事も出来ます。
但し、父に認知されたとはいえ、その父と母が婚姻状態に無い限り、その子の身分は非嫡出子のままとなります。
〔非嫡出子の法定相続分〕
従来、非嫡出子の法定相続分は、嫡出子の法定相続分の二分の一とされていました。(旧民法第900条4号但し書き前段)
しかし、この『嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の二分の一とする』という民法第900条の規定(以下、この規定を『嫡出に関する規定』といいます)は、『すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない』と定めている日本国憲法第14条に対し違憲であるとの判断が、平成25年9月4日に最高裁判所において下されました。
この最高裁判決を受けて、平成25年12月に民法第900条4号但し書き前段にある嫡出に関する規定が削除されました。
認知の方法には2つある
婚姻外で生まれた子を認知する方法には、大きく分けて『任意認知』と『強制認知』の2つがあります。
任意認知
一般的に認知の手続きは、父親となる者が行うケースが多いと考えられます。
何故ならば、母子関係は、わざわざ認知などしなくても出産の事実があれば、母子関係が成立していると考えられていますので、母親が出生届出をすれば、それで認知した事になるからです。
認知の手続きは、市区町村役場に備え付けられている“認知届”という用紙に必要事項を記入し、必要な書類を添付して提出して行います。
これが『任意認知』と呼ばれる認知の方法です。
書式が決まっている
任意認知について民法上では、『認知は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによってこれをする』と定められています。(民法第781条)
従って、『確かに自分の子です』といった類の証文を入れたり、引き取って養ったりしたとしても、それだけでは認知した事にならないのです。
認知届の提出先
認知届は、認知する父の住所地又は本籍地の市区町村役場、或いは、認知される子の本籍地の市区町村役場に提出します。
認知は遺言でも出来る
任意認知は、通常は上記のとおり認知届を市区町村役場に提出する事によって行いますが、遺言によって認知する事も可能なのです。(民法第781条2項)
遺言による認知の場合、その遺言者が死亡した時にその認知の効力が発生します。
制限行為能力者の認知
通常、未成年者や成年被後見人といった制限行為能力者が法律行為をする際には、親権者や成年後見人といった法定代理人の同意が必要が必要とされます。
しかし、この認知行為については、たとえ認知する者が未成年者や成年被後見人であってもその法定代理人の同意は不要とされています。(民法第780条)
但し、その認知する者が精神的病を患っていて、正気に復すことが出来ないような場合には、認知行為は出来ません。
強制認知
実の父が自ら進んで認知してくれない場合には、その子自身、その子の直系卑属又は、これらの者の法定代理人が、その実の父である者を相手に訴えを提起して、認知を求める事が出来ます。(民法第787条)
これが、『強制認知』と呼ばれる認知の方法です。
つまり、自分の子である事を認めようとしない父を裁判に訴えて、認知する事を要求する訳です。
裁判を提起する場所
この裁判は、子供の住所地域にある地方裁判所に提起します。
調停や審判による認知も可能
実際には、強制認知の裁判を提起する前に家庭裁判所へ認知調停の申し立てを行い、そこで調停を試みます。
その調停で合意に達すれば、家庭裁判所は必要な事実を調査し、認知の審判を下します。
もし、この調停において認知合意が得られない場合には、認知を求める裁判を提起する事になります。
相手方が既に死亡している場合には?
認知を求める裁判を提起する場合において、その相手方である父又は母が、既に死亡している場合には、その死亡の日から3年以内であれば、検察官を相手としてこの裁判の提起は可能です。