認知の効力
認知の効力
婚姻外で生まれた子が認知されると、その認知された子の出生の時に遡って認知の効力が発生します。
例えば、その認知された子が10歳の時に認知されたとすると、その認知された時からではなく生まれた時点に遡って父と子の親子関係が成立するという訳です。
従って、その認知された子が生まれた時点から父親との相続関係や扶養関係が発生するという事になるのです。
第三者の権利を害する事は出来ない
認知の効力が、その認知された子の出生時に遡るといっても第三者が既に取得した権利を害する事は出来ません。
例えば、婚姻外の子が未成年であり、その子に親権者がなく後見人がついていた場合において、その後見人の同意を得てその未成年の子から土地を購入した第三者がいたとします。
後見人の同意を得た取引なので、その土地の購入取引は正式に成立します。
その後、その未成年の子が父親に認知されると、認知の効力は出生時に遡る為、その子は出生時から親権者である父親が存在していた事になります。
この場合、一見すると後見人は土地の売買時点において同意する権限を失っていたかのように思えますが、その土地の売買取引は無効にはならないのです。
従って、その未成年の子から土地を購入した者は、その土地を返還する必要は無いという事になります。
母親は養育費を請求出来る
その子が生まれた時点に遡って父親との親子関係が発生するという事は、その子の母親は、当然その父親に対し子供の養育費の分担を請求する事が出来ます。
例えば、子が10歳の時に認知されのであれば、その母親は、子が10歳になるまでに要した養育費の分担をその父親に請求出来るという訳です。
父の扶養費を請求される可能性も
例えば、父親が寝たきり等で介護を要る状態であり、その介護費用は、その父親の他の子達が負担していたとします。
その場合において、その父親に認知された子があると、その認知された子は生まれた時点からその父親の子として扱われますので、当然、その父親の介護費用も負担すべきだったという事になります。
そうなると、その認知された子は、その父親の他の子達から介護費用の分担を要求される可能性があります。
当然相続権もある
認知の効力が、その認知された子の生まれた時点に遡って発生するという事は、当然、その父親に対する相続権も有している事になります。
つまり、その父親の財産を相続する権利があるという事です。
既に相続財産が処分されていたら?
非嫡出子の認知は、遺言によっても可能です。
遺言による認知は、その遺言者が死亡した時にその効力が発生します。
例えば、遺言者である父が死亡し、相当期間経過した後に婚姻外の子を認知する旨の遺言書が見つかったとします。
この場合、その婚姻外の子は、父が死亡した後に相続人としての権利を取得する事になります。
その認知された子は、相続人としての権利がある限り、その死亡した父親の財産の分割を他の相続人に対して要求する事が出来ます。
しかし、その要求した時点で既に相続財産が処分されてしまっていた場合には、どうなるのでしょうか?
この場合には、その認知された子は、自分の相続分に相当する金銭を要求する事が出来るに留まり、遺産分割のやり直しを要求する事は出来ないのです。(民法第910条)
≪終わり≫