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相続について

太陽光発電設備と小規模宅地特例

太陽光発電設備

 個人が所有している畑や山林等で遊休している土地を有効活用する目的で太陽光発電設備を設置している方が増えているようです。

 太陽光発電設備を設置する為には、先ずは『架台(太陽光パネルを支える台』を設置する必要があるのですが、その工法は、色々あるようです。

 例えば、
  ①杭を地面に打ち込んで架台を固定する方法
  ②パイプを地面に埋め込んで架台を固定する方法
  ③コンクリートブロックを地面に設置し架台を固定する方法
  ④地面をアスファルトで舗装してその上に架台を固定する方法

 といった工法があるようです。

 要は、架台を固定し支える為の基礎づくりと呼ばれる部分です。

小規模宅地特例_特定事業用宅地等

 小規模宅地特例の中には、被相続人が所有していた土地等でその被相続人等の事業の用に供されていたもので一定の要件を満たす場合は、その土地等の評価額が減額(△80%又は△50%)されるケースがあります。

 この特例の対象となる為には、その土地等が被相続人等の事業の用に供されている事はもちろんですが、もう1つ条件があります。

 それは、『その土地等が一定の建物又は構築物の敷地の用に供されている事』なのです。

構築物の敷地

 上記のとおり、被相続人が所有していた土地等が構築物の敷地の用に供されており、その被相続人等が事業を営んでいる等一定の条件を満たしていれば、特定事業用宅地等として、その土地等の評価額が減額される特例を受けられます。

 では、冒頭で述べた太陽光発電設備は、この小規模宅地特例の対象となる『構築物』に該当するのでしょうか?

構築物の存在が不可欠

 太陽光発電設備の敷地の用に供されている土地等が、小規模宅地特例の対象となる為には、構築物の存在が不可欠です。

 何故なら、パネル部分等で構成されている太陽光発電設備そのものの資産分類は、『機械装置』に該当します。

 よって、何も施工せずに土地等の上に直に太陽光発電設備が設置されている場合には、『構築物』が存在しない為、その敷地の用に供されている土地等は、小規模宅地特例の対象になりません。

 しかし、実際には、土地等の上に直に太陽光発電設備を設置するケースは殆ど無く、何らかの設備を施工するケースが多いと思います。

 問題は、その設備が『構築物』に該当するかどうか?という点になります。

構築物とは?

 では、そもそも『構築物』とはどのような設備を指すのでしょうか?

 この『構築物』の定義は、相続税法には規定されていませんが、法人税法には、『ドック、橋、岸壁、桟橋、軌道、貯水池、坑道、煙突その他土地の上に定着する土木設備又は工作物をいう』と定義されています。(法令13条二号

 また、平成21年1月29日付の札幌地裁判決によると、小規模宅地特例でいう『構築物』とは、「物的な資本投下がなされたある程度堅固な施設であり、容易に撤去・除去出来ず、処分面での制約があるもの」という判断を示しています。

 つまり、簡単に撤去・除去出来て他の用途への転用が容易であり、処分面での制約が少ないものは、小規模宅地特例でいうところの『構築物』には、該当しないという訳です。

 判断ポイントは、「撤去・除去の容易性」と「処分面での制約の大小」と言えるでしょう。

太陽光発電設備は構築物か?

 前述したとおり、太陽光発電設備そのものは機械装置に該当しますので、それを支える基礎部分が構築物に該当するか否か?が問題になります。

 ポイントは、「撤去・除去の容易性」と「処分面での制約の大小」です。

比較的簡易な基礎部分

 前述した「①杭を地面に打ち込んで架台を固定する方法、②パイプを地面に埋め込んで架台を固定する方法、③コンクリートブロックを地面に設置し架台を固定する方法」を例にみてみましょう。

 ③のようにコンクリートブロックを地面に置いただけで地面に固着させていないものは、構築物に該当しないと判断されるでしょう。
 
 また、①や②は、③程ではないとしてもやはり、「撤去・除去の容易性」と「処分面での制約の大小」という点からみて構築物とは言い難いと言えるでしょう。

アスファルト舗装

 太陽光発電設備の用地に雑草が生えてこないようにする為等の理由から敷地全体をアスファルト敷きにするケースもあるようです。

 先述した①~③の工法と比較すると、「撤去・除去の容易性」は低く、また「処分面での制約の大小」
は大きいように思えます。

 しかし、アスファルト敷きにしたからといって、即座にそれが構築物に該当するとは言い切れません。

 実際の現場の状況や規模感等を総合的に勘案し、実態に基づいて判断される事になるでしょう。

フェンスで囲ったら?

 人や動物の侵入を防ぐ目的から太陽光発電設備の敷地の周囲をフェンスで囲っているケースも見受けられます。

 フェンス自体は、通常は構築物に該当すると言えます。

 しかし、フェンスで囲った土地全体が、構築物の敷地の用に供されている土地とは言えません。

 何故ならフェンスが“立っている”部分のみが構築物(フェンス)の敷地の用に供されている部分だからです。

売電行為が『事業』に該当するか?

 仮にアスファルト等で舗装された基礎部分が構築物に該当したとしても、そもそもその売電行為が『事業』に該当しなければ、小規模宅地特例を受ける事は出来ません。

 では、どのような売電行為であれば、『事業』に該当するのでしょうか?

 この点については、資源エネルギー庁のHP『グリーン投資減税について』に一定の判断基準が示されています。

 これによると、発電出力が50kW以上であれば、基本的には事業所得に該当するようです。

 一方、発電出力が50kW未満の場合は、原則として雑所得に該当しますが、たとえ50kW未満であっても必要な保守管理を行っている等の一定の要件を満たせば、事業所得に該当するようです。

 このようにその売電行為による所得が、事業所得に該当するのであれば、小規模宅地特例の適用においても『事業』として認められるようです。

≪終わり≫

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