アトラス総合事務所

HOME » 相続について

相続について

小規模宅地特例と『家なき子』

基礎控除の引下げ

 平成27年1月1日以後に発生した相続から、遺産に係る基礎控除額が引下げられています。

 〔引下げ前〕
   5,000万円+(法定相続人の数×1,000万円)

 〔引下げ後〕
   3,000万円+(法定相続人の数×600万円)

 この基礎控除額の引下げに伴い、相続税の申告対象となる者が増加するものと思われます。

基礎控除額以下なら申告義務無し

 相続税の申告書を提出することを要件とする特例の適用が無い場合において、各相続人が取得した財産の総額が、遺産に係る基礎控除額を下回っているときは、相続税の申告義務がありません。

 従って、この申告の要否を判定する上で重要な要素となる遺産に係る基礎控除額が引下げられた事による影響は大きいのです。
 
 例えば、都心部に自宅不動産を所有している被相続人は、自宅不動産(特に土地)の価値が高くなりますので、遺産に係る基礎控除額の引下げに伴い相続税の申告義務が発生する可能性が高くなると思われます。

小規模宅地特例

 しかし、自宅不動産の内、その敷地となっている土地等については、小規模宅地特例の適用があり、一定の要件を満たせば、その土地等の評価額が大幅に減額(△80%又は△50%)されます。

 この小規模宅地特例には、いくつかのパターンがあるのですが、その中の1つに『家なき子』に係る特例があります。

『家なき子』に係る特例

 『家なき子』に係る特例とは、被相続人の居住の用に供されていた宅地等で、次の要件を満たす場合に適用される特例を指します。

 ■被相続人が一人暮らしであること。
   被相続人の配偶者、又は、相続開始直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋に居住していた親族
  (相続放棄が無かったものとした場合における民法上の相続人を指します)がいないこと。

 ■申告期限まで保有すること。
   その宅地等を取得した親族が、その宅地等をその相続税の申告期限まで保有していること。

 ■マイホームに居住した事がないこと。 
   その宅地等を取得した親族が、その相続開始前3年以内に日本国内にある自己又は自己の配偶者
  の所有に係る家屋(その相続開始直前においてその被相続人の居住の用に供されていた家屋を除きます)に居住した
  事がないこと。

『居住』の有無が問われている

 3つ目の『マイホームに居住した事がないこと』という要件が、いわゆる『家なき子』と呼ばれる由縁なのですが、ここで1つ注意点があります。

 この3つ目の要件で要求されているのは、あくまでも『マイホームに“居住”した事がないこと」であり、『マイホームを“所有”した事がないこと』とは規定されていない、という点です。

『居住』していなければ可

 つまり、被相続人の宅地等を取得した者が、自分名義又は自分の配偶者名義の家屋を所有していたとしてもその家屋を賃貸に供しており、自分自身は、別に部屋を借りて居住している場合等は、3つ目の要件である『マイホームに居住した事がないこと』という要件を満たす事になるのです。

孫等も該当する場合あり

 この『家なき子』に係る特例の対象となるその被相続人の宅地等を取得した親族というのは、その被相続人の配偶者以外の親族を指します。

 従って、その被相続人の子だけでなく、孫や甥っ子等であっても適用要件を満たせば、家なき子に係る小規模宅地特例の適用を受ける事が可能となります。

 但し、孫等が相続した場合には、その孫等は相続税額の『2割加算』の対象となりますので、注意が必要です。(相法第18条

« 記事一覧に戻る

ページの先頭へ