兄弟姉妹の代襲相続
兄弟姉妹の代襲者
被相続人の子が一定の理由により相続する事が出来ない場合には、その子の子(つまり被相続人の孫)が、その子に代わって相続します。
この場合における被相続人の孫を『代襲者』と呼び、被相続人の子を『被代襲者』と呼びます。
この関係は、被相続人の相続人が兄弟姉妹である場合にも成り立ちます。
つまり、本来なら相続人となる筈だった被相続人の兄弟姉妹が、一定の理由により相続する事が出来ない場合には、その相続する事が出来ない兄弟姉妹の子が代わりに相続する事が出来るのです。
兄弟姉妹の代襲者の要件
相続人となる兄弟姉妹の代襲者となる為には、下記のそれぞれの要件を満たす必要があります。
〔(要件1)兄弟姉妹が相続権を失っていること〕
兄弟姉妹が、次の理由により被相続人に対する相続権を失っている必要があります。
■相続開始前に死亡している。
■相続欠格事由に該当している。(民法第891条)
尚、その兄弟姉妹が、その被相続人に対する相続を放棄する事によっても相続権を失う事になります。
しかし、被相続人に対する相続を放棄した場合には、その兄弟姉妹は当初から居なかったものとして扱われるため、その放棄した兄弟姉妹の子は、代襲者になる事は出来ません。(民法第939条)
〔(要件2)兄弟姉妹の子であること〕
兄弟姉妹の代襲者となる為には、その兄弟姉妹の子である必要があります。
この場合の子は、実子・養子のどちらでも構いません。
〔(要件3)被代襲者に対する相続権を失っていないこと〕
代襲者(兄弟姉妹の子)は、被代襲者(被相続人の兄弟姉妹)に対する相続権を失っていないことが必要です。
もし、代襲者が、相続人の欠格事由や相続人の廃除により被代襲者に対する相続権を失っている場合には、その代襲者は、被代襲者を代襲する事は出来ません。
〔(要件4)生存していること〕
代襲者は、その相続開始の時点において生存している必要があります。
再代襲相続は出来ない
被相続人の子の代襲者である孫が、一定の理由により被相続人の子に対する代襲相続権を失っている場合には、その孫の子(つまり、被相続人の曾孫)が代襲する『再代襲相続』が認められています。
(民法第887条③項)
しかし、兄弟姉妹については、この再代襲相続は認められていないのです。
例えば、被相続人であるAの相続人となる兄弟姉妹(B、C、D)の内、DがAに対する相続権を失っていた場合には、通常であれば、Dの子であるdが代襲者としてAを代襲相続します。
しかし、このdがDに対する相続権を失っていたとします。
この場合、たとえdに子(つまりDの孫)がいたとしてもそのDの孫は、Aを再代襲相続する事は出来ないのです。
相続人の廃除
被相続人の孫が、被相続人の子の代襲者となる場合における『子が被相続人に対する相続権を失っていること』の理由の1つとして、『相続人から廃除されていること』が挙げられています。
しかし、被相続人の兄弟姉妹が、その被相続人に対する相続権を失っていることの理由には『相続人からの廃除』は挙げられていません。
どうしてでしょうか?
それは『兄弟姉妹には遺留分が無いから』です。
どういう事かと言いますと、例えば、被相続人であるAが、相続人となる兄弟姉妹(B、C、D)の内のBには財産を渡したくないと考えていたとします。
この場合、兄弟姉妹には遺留分がありませんから、Aは、他の兄弟姉妹であるCとDに生前に贈与したり、CとDにのみ財産を相続させる旨を遺言する事により、Bに財産が行き渡らないようにする事が可能だからです。
そうすれば、『相続人からの廃除』という手段を用いなくとも結果的に特定の兄弟姉妹を相続から廃除する事が可能となる為です。
その為、相続人の廃除の規定は、兄弟姉妹には適用されない事となっているのです。(民法第892条)
≪終わり≫