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相続について

相続_承認と放棄

相続が発生すると?

 相続が発生すると、その相続人は相続が発生した瞬間から被相続人に帰属する一切の財産と債務を当然に引き継ぐ事となります。

 しかし、これは自動的・強制的に確定するものではなく、相続人がある一定期間内に自らの意思表示により、その引き継ぐ方法を自由に選択することが出来る権利が与えられています。

引き継ぐ方法の選択肢

 被相続人の財産と債務を引き継ぐ場合、その方法には次の3つの選択肢があります。

   ■単純承認
   ■限定承認
   ■放棄

単純承認

 単純承認とは、被相続人に帰属する一切の財産と債務を無制限に引き継ぐ方法です。

 単純承認をした場合、財産を引き継ぐ分には困る事は無いと思いますが、債務については、困る事が生じる場合があります。

債務超過の場合には自腹を切ることも

 単純承認の場合、被相続人の財産と債務を無制限に承継します。

 よって、もし承継した財産が1億円で、同じく承継した債務が1億5,000万円だったとすると、承継した財産だけでは、承継債務を完済する事が出来ず、不足分の5,000万円は、相続人固有の財産から自腹を切って弁済する必要が生じてしまうのです。

 このように被相続人が債務超過の状態であれば、単純承認は不利になると言えます。

 しかしその一方、相続開始時点だけをみれば債務超過で不利に見えたとしても、財産の将来における収益力や価値の上昇見込等の長期的視野に立って考えると必ずしも不利になるとは言い切れない場合もあるでしょう。

 案外、この辺の判断は難しいかもしれません。

限定承認

 
 限定承認とは、相続によって得た財産を限度としてのみ、被相続人の債務弁済を了承して相続を受諾する事をいいます。

 例えば、被相続人の財産が1億円で、債務が1億5,000万円だったとすると、相続人が弁済すべき債務は、財産額の1億円までであり、残りの5,000万円については弁済を要しないという相続方法です。

 つまり、限定承認であれば、被相続人の債務がどんなに多額にあったとしても、相続人が自腹を切る必要は無いという訳です。

限定承認の方法

 限定承認をしようとする場合には、後述する考慮期間内に財産目録を作成して家庭裁判所に提出した上で限定承認をする旨を申述しなければなりません。(民法第924条

 また、相続人が複数人ある場合において、一部の相続人にのみ限定承認を認めてしまうと、相続を廻る権利関係が極めて複雑となってしまいます。

 よって、相続人が複数人ある場合において限定承認をしようとするときには、その相続人の全員が共同して限定承認をしなければならない事とされています。(民法第923条

限定承認はどんな場合に?

 限定承認は、相続財産の方が相続債務よりも多ければ、その余りを貰い、逆に相続債務の方が多ければ、相続人が自腹を切ってまで弁済する必要は無いとする最もドライな相続方法と言えます。

 よって、限定承認という方法は、相続財産と相続債務のどっちが多いのか?がいまいちはっきりしない場合に有効な相続方法と言えるでしょう。

 しかし、財産目録を作成しなければならない点や他の相続人の全員が共同してしなければならない点等が馴染めず、日本においてはあまり活用されていないようです。

相続の放棄

 相続人は、相続する事を放棄することも出来ます。

 相続を放棄した場合、その放棄した者は、初めから相続人ではなかったものとみなされます。

 よって、その放棄した者を代襲して他の者が相続するという事は起こりません。

放棄するとどうなる?

 相続を放棄した者は、被相続人の財産を1円たりとも貰えなくなります。

 その代わり、被相続人に莫大な債務があったとしても1円たりとも負担する必要はありません。

 よって、被相続人が明らかに債務超過であり、相続後に莫大な債務弁済が待ち構えているような場合には、相続を放棄した方が賢明と言えるでしょう。

相続を放棄するには?

 相続を放棄する場合には、後述する考慮期間内に相続を放棄する旨を家庭裁判所に申述しなければなりません。

 なお、その申述に必要な用紙は、各家庭裁判所に備え付けてあります。

考慮期間

 上記の『単純承認』、『限定承認』又は『相続放棄』は、自分が相続人となった事を知った日から3ヶ月以内に決めなければなりません。

限定承認と相続放棄については、所定の手続きをとる必要がありますが、単純承認については、特に決まった手続きをとることなく、3ヶ月以内に上記の意思表示をしなければ自動的に単純承認をした事になります。

単純承認とみなす場合

 次に掲げる事実が生じた場合には、単純承認をしたものとみなされます。(民法第921条)

   ■相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。(保存行為に該当する処分を除きます)

   ■相続人が考慮期間内に限定承認又は相続放棄をしなかったとき。

   ■相続人が限定承認又は相続放棄をした後であっても相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私的にこえを消費し、又は、
    悪意でこれを財産目録中に記載しなかったとき。

被相続人が相当な債務超過に陥っている場合において、相続財産を意図的に処分したりすると、その処分した相続人は単純承認をしたものとみなされて、莫大な債務弁済を強いられる事になりますから注意が必要です。

考慮期間の実務

 上記のとおり考慮期間の原則は、『自分が相続人となった事を知った日から3ヶ月以内』です。

 しかし、いくら相続の開始があった事を知ったとしてもその被相続人の財産や債務がどれ位あるのかを知らなければ、単純承認をすれば良いのか?限定承認をすれば良いのか?それとも相続放棄をすれば良いのか?の判断が出来ません。

 そこで、相続放棄の実務においては、相続の開始があった事を知った日から3ヶ月を経過してしまったとしても『被相続人の財産や債務の状況を知ってから3ヶ月以内』であれば、相続放棄の申述が認められるケースが多いようです。

≪終わり≫

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