小規模宅地特例_賃貸併用住宅と区分所有
居住用の小規模宅地特例
被相続人が所有している土地等の内、その被相続人の居住の用に供されている建物の敷地の用に供されている部分は、限度面積(平成27年1月1日以後に発生した相続の場合330㎡)までの範囲内において、特定居住用宅地等として△80%評価減の対象となります。
ところで、この被相続人の居住の用に供されている建物ですが、日本の高齢化社会を反映してか二世帯住宅の方式を採っている家庭も多いのではないでしょうか?
二世帯住宅と建物の構造
この二世帯住宅、多くの場合は、両親世帯(被相続人)と子供世帯が各々独立した区画に居住するケースが多いと思います。
例えば、2階建ての家屋の1階部分に両親世帯(被相続人)が居住し、2階部分に子供世帯が居住するというケースです。
この場合、その建物の構造は、大きく分けて次の2種類があります。
1.建物内部で1階部分と2階部分を自由に往来出来ない構造
2.建物内部で1階部分と2階部分を自由に往来出来る構造
以前は内部で往来出来ないと別居扱い
1のように建物内部において1階部分と2階部分とを自由に往来出来ない構造の建物の場合、以前であれば、2階部分に居住している子供世帯は別居扱いとされ、その敷地等の内、2階部分については特定居住用宅地等としての△80%評価減の適用は受けられませんでした。
改正により往来出来なくても特例対象に
しかし、改正により、平成26年1月1日以後に発生した相続からは、上記1のように建物内部において自由に往来出来ない構造であってもその敷地等の全体が、被相続人の居住用として限度面積までの範囲内において△80%評価減の対象となる事となりました。
但し、区分所有登記の建物は除かれる
しかし、その建物が区分所有登記されている場合、上記の例でいえば、1階部分が被相続人の区分所有となっており、2階部分が子供の区分所有になっているというケースの場合には、その敷地等の内、被相続人の居住部分、つまり1階部分のみが△80%評価減の対象となり、子供世帯が居住している2階部分は評価減の対象とならないのです。
賃貸併用住宅と区分所有登記
巷では、3階建てとなっている住宅も多く見かけるようになりました。
3階建て住宅の場合、1階部分を賃貸に供して、2階と3階部分を居住用に使用するというケースも多い事と思います。
このような3階建ての住宅を二世帯住宅として使用する場合、2階部分に両親世帯(被相続人)が居住し、3階部分に子供世帯が居住するケースもあるでしょう。
賃貸部分と居住用部分とを区分所有登記していたら?
例えば、上記の例において「1階の賃貸部分」と「2階+3階の居住部分」とをそれぞれ区分して被相続人の所有登記としたとします。
つまり、1階部分は、賃貸用として被相続人が区分所有し、2階+3階部分を居住用として被相続人が区分所有する、という形です。
その結果、子供世帯は、被相続人が区分所有している3階部分に居住する形となります。
区分所有登記との関係は?
先述したとおり、被相続人の居住部分である1階と子供の居住部分である2階とをそれぞれ区分し、1階部分を被相続人の区分所有、2階部分を子供の区分所有としてしまうと、2階部分に対応する敷地部分は、△80%評価減の対象となりません。
では、上記の3階建ての賃貸併用住宅の場合は、どうなるのでしょうか?
専有部分として区分所有登記しているかどうかで判定
結論から言いますと、上記の例では、2階+3階部分は、区分所有登記の建物には該当せず、その敷地等の内、2階+3階部分に対応する部分が、△80%評価減の対象となるのです。
評価減の対象となる「被相続人の居住の用に供している建物」とは、物理的な一棟の建物そのものを指すのではなく、「専有部分として区分所有登記された建物部分」を指すのです。
よって、上記の例における建物それ自体は、「区分所有登記されている建物」に該当しますが、2階+3階部分を一つの専有部分として被相続人の区分所有としている為、2階+3階部分が「被相続人の居住の用に供している建物」に該当するのです。
言わば、2階+3階部分が「2階建ての建物」のような形となり、各々の階を区分して所有登記していない為、子供世帯が居住している3階部分も含めて2階+3階部分が、特定居住用宅地等として△80%評価減の対象になるという訳です。
ちなみに上記の例において、一定の要件を満たせば、貸付事業用宅地等として、△50%評価減の対象となります。
≪終わり≫