相続財産法人から財産分与を受けるとどうなる?
相続財産法人って何?
通常、人が亡くなるとその亡くなった者、つまり被相続人に帰属する財産は、相続人が相続し承継されます。
しかし、世の中には天涯孤独の者や親族達と長年音信不通だった為、相続人となるべき者が容易に確定出来ない場合があります。
このような場合、放置しておくと被相続人の財産が宙に浮いてしまい、とても困った事になってしまいます。
では、このような場合はどうなるのでしょうか?
財産を法人とみなす
被相続人の財産を相続すべき相続人を容易に確定出来ない場合には、民法の定めによりその被相続人の財産を法人とみなして管理する事となるのです。(民法第951条)
管理人が選任される
被相続人の財産が法人とみなされた場合には、家庭裁判所は、その財産に利害関係を持っている者又は検察官の要求によって財産の管理人を選任します。
法人とみなされた財産の具体的な管理は、この選任された管理人が執行することとなり、公告をして被相続人に対する債権者や相続人を探す作業を行うのです。
どうしても相続人が見つからなかったら?
財産の管理人が一生懸命に相続人となるべき者を捜索しても見つからなかった場合には、その財産はどうなってしまうのでしょうか?
財産の分与を受けられるかも?
相続人が一人もいない事が確定した場合には、家庭裁判所は、相当と認めるときは、被相続人と特別の縁故関係があった者、これを『特別縁故者』と呼ぶのですが、この特別縁故者に残存する財産の全部又は一部を分与することが出来るのです。(民法第958条の3)
〔特別縁故者とは?〕
特別縁故者とは、被相続人と特別な縁故があった者で、相続人が全くいない事が確定した際、請求により家庭裁判所から相続財産の分与を受ける事が出来る者のことをいいます。
被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別な縁故があった者の中から家庭裁判所の裁量により決定されます。
具体的には、被相続人の内縁の妻や未認知の子、事実上の養子等が該当します。
分与を受けた際の課税関係は?
家庭裁判所からの決定を受け、特別縁故者として被相続人の財産を分与された者に対する課税関係はどうなるのでしょうか?
遺贈によって取得したものとみなされる
特別縁故者として被相続人の財産を分与された者は、その被相続人から遺贈によって財産を取得したものとみなされて、相続税が課される事となります。(相法第4条)
分与時の時価で課税
遺産の分与を受けた特別縁故者に対し相続税が課される場合、その分与を受けた財産は、その分与を受けた時の時価により被相続人から遺贈により取得したものとみなされます。
通常、相続や遺贈によって取得した財産は、その相続開始時点の時価により評価され課税されます。
しかし、この特別縁故者に対する財産分与については、その分与された時の時価により評価される為、財産の事情によっては、相続開始時の時価と分与された時の時価が大きく乖離してくるケースも有り得るでしょう。
例えば、相続開始時点ではまだ未公開だったが、相続開始後に公開した株式を特別縁故者として分与された場合には、相続開始時の時価と分与された時の時価が大きく異なるかもしれませんね。
≪終わり≫