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相続について

教育資金の一括贈与

1.概要

平成25年4月1日から「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度」がスタートしました。1,500万円までの教育資金を祖父母から孫へ金融機関を通して贈与しても贈与税が課税されないというものです。

高齢者世代が保有する資産の若い世代への移転を促進することにより、子どもの教育資金の早期確保を進め、経済活性化にも寄与することを期待してできた制度です。

2.制度の概要

① 期間

平成25年4月1日から平成27年12月31日までに行われる贈与が対象です。

② 直系尊属からの贈与

直系尊属とは、贈与してもらう人の父母、祖父母、曾祖父母をいいます。

③ 贈与の仕方

子や孫名義の金融機関の口座等に、教育資金を一括して預け入れます。

④ 教育資金の引き出し

子や孫が30歳になるまで教育資金の領収書等を引き換えに金融機関から資金を引き出して使います。

⑤ 非課税限度額

学校等以外の学習塾などの教育資金は500万円、学校等への教育資金は1,500万円、両者合わせて1,500万円が非課税限度額となります。

⑥ 使い切れなかったら

教育資金として金融機関に預けられたお金を教育資金として子や孫が30歳になるまで使い切れなかった金額は、その時点で贈与税の対象となります。

3.学校等(1,500万円まで非課税)

① 対象となる学校等

幼稚園、小学校、中学校、高等学校、大学、大学院、専修学校、各種学校、保育所、認定こども園等です。

② 対象となる学校教育費

入学金、授業料、入園料、保育料、施設設備費、教育充実費、修学旅行費用、遠足費、入学検定料、PTA会費、生徒会費、寮費等です。

4.学校等以外(500万円まで非課税)

① 対象となる習い事等

・学習(学習塾・家庭教師、そろばん、キャンプ等の体験活動など)

・スポーツ(スイミングスクール、野球チームでの指導など)

・文化芸術活動(ピアノの個人指導、絵画教室、バレエ教室など)

・教養の向上のための活動(習字、茶道など)

② 対象とならない習い事等

上記のような習い事でも、教育のために支払われるものとして社会通念上相当でないと認められるものは除かれます。文部科学省の資料では、例として次のような習い事は社会通念上相当でないとしています。

・賭博やギャンブルに関するもの(麻雀やカジノの手法を教える教室)

・酒類やタバコを楽しむことを目的とする講習

・遊興、遊技を内容とするもの(トランプ、パチンコ、ゲーム、カラオケ、手品、占い等を教える教室など)

・娯楽目的の鑑賞を行うことを目的とするもの

 ③ 対象となる費用

月謝、謝礼、入会金、参加費、施設使用料などや教室や指導者の名で領収書が出るテキスト代や用具代などです。

 

5.教育資金以外に使ったら

金融機関に預けてある一括贈与された資金でスポーツカーを買ってしまったら、その資金は孫が30歳になった時点で贈与税の対象となり、金融機関の口座に使われずに残っている資金と一緒に贈与税の申告をして贈与税を納税することになります。

6.相続税対策に有効

子や孫に教育資金を贈与した父母・祖父母が死亡しても、金融機関に預けた教育資金は、贈与された子や孫が30歳になるまでそのまま生き続けます。したがって、死亡した父母・祖父母の相続財産にはなりません。

余命いくばくの人が、自分の財産を相続人に贈与して相続税を逃れるのを防止するために、相続税法では、相続開始前3年以内に相続人に贈与された財産については、相続財産に加算することになっています。しかし、この教育資金の一括贈与に関しては、この制度の対象とはなりません。

したがって、余命半年というような状況でも、30歳未満の自分の子や孫に1,500万円ずつ教育資金の一括贈与を行えば、自らの相続財産を素早く減らすことができて、結果として相続税も減ることになるのです。

7.この制度を使わなくても

相続税法では、扶養義務者相互間において、生活費または教育費に充てるための贈与で、通常必要と認められる部分の金額については、贈与税を非課税にすることとしています。

扶養義務者には直系血族(曾祖父母、祖父母、父母、子、孫、曾孫)も含まれますので、祖父母が孫の教育費を負担したような場合は、贈与税は非課税となります。

この場合、孫の親が裕福な資産家であって、教育費の負担に全く問題がない場合であっても、祖父母が負担した孫の教育費に対して贈与税が課税されることはありません。

8.どう使い分ける?

教育資金の一括贈与は、一度に教育資金を最大1,500万円贈与できる点が優れています。扶養義務者相互間の贈与では、必要な教育費が発生する都度に、直接それらの支払いに充てるために贈与することになります。

贈与する側の祖父母が、自分の老後資金を十分残したうえでの余裕資金で贈与するのであれば教育資金の一括贈与もよいでしょう。しかし、老後資金にあまり自信がない祖父母であれば、扶養義務者相互間の教育費の贈与をできる分だけするのが良いかもしれません。

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