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相続について

相続税の取得費加算

制度の概要

 相続又は遺贈により財産を取得した者が、その相続等により取得した財産を一定期間内に譲渡した場合には、その者に課された相続税額の内、一定の金額をその譲渡した財産の取得費に加算して譲渡所得を計算する特例が適用出来ます。(措法39条①

特例の適用が受けられる場合

 この特例は、下記の要件を満たす場合に適用を受けられます。
  ■相続又は遺贈により財産を取得した者で、相続税が課された者であること。
  ■その譲渡した資産が、相続税の課税価格の計算の基礎に算入された資産で、その相続の開始があった日の翌日から、
   その相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年以内に譲渡されたものであること。

取得費に加算する相続税額

 取得費に加算する相続税額は、その譲渡した資産が、「1.土地又は土地の上に存する権利(以下、「土地等」といいます」の場合と「2.土地等以外」の場合で計算方法が異なります。
 
 具体的な計算式は、こちら をご参照下さい。

土地等の場合

 譲渡した資産が土地等の場合は、計算式中の分子に用いる価額は、分母である課税価格に含まれている全ての土地等の価額を用います。
 つまり、実際に譲渡した土地等はもちろんのこと、譲渡していない土地等に対応する相続税額も取得費に加算出来るという事になります。
 これは、バブル経済期において相続税の納税資金を確保する為に土地等を譲渡した場合の高額な譲渡所得に対する納税負担に配慮した為と言われています。

(注)
平成26年度税制改正により、当該特例は改正され、譲渡資産が土地等であっても取得費に加算される相続税額は、その譲渡した土地等に対応する部分の金額のみに制限される事となりました。
 詳細は、こちら をご参照下さい。

土地等以外の場合

 譲渡した資産が土地等以外の場合は、計算式中の分子に用いる価額は、分母である課税価格の内、その譲渡した資産に係る価額を用います。
 つまり、譲渡した資産に対応する相続税額のみが取得費に加算されるという事になります。

計算式の細目

 相続税の取得費加算の計算式における細目は、下記のとおりです。

その者の相続税額

 計算式における『その者の相続税額』とは、その資産の譲渡があった日の属する年分の所得税の納税義務が成立する時(通常は、その年の12月31日)において確定している相続税額となります。

〔所得税の申告期限までに相続税額が確定する場合は?〕

 上記のとおり相続税の取得費加算の計算式で用いる相続税額は、所得税の納税義務が成立する12月31日時点で確定している相続税額となります。
 では、その年中に相続等で取得した資産を譲渡しているが、その譲渡した年の12月31日までに相続税の申告が完了しておらず、相続税額が確定していない場合はどうなるのでしょうか?

 この場合は、その譲渡年分の所得税の申告期限日(通常は翌年の3月15日)までに相続税の申告が完了し、相続税額が確定すれば、その譲渡年分の所得税の申告において、相続税の取得費加算の特例が適用出来ます。(措基通39-1

〔所得税の確定申告後に相続税額が確定した場合は?〕

 では、譲渡年分の所得税の申告期限後に相続税の申告が完了し相続税額が確定した場合は、どうなるのでしょうか?

 この場合は、次の要件の全てを満たす場合に限り、この特例が適用され所得税の減額更正がなされます。(措基通39-15
  ■納税者から相続税の取得費加算の適用を受けたい旨の申し出があること。
  ■その相続に係る相続税の申告書をその提出期限内に提出していること。
  ■相続税の取得費加算の特例を受ける為に所得税の申告書に添付すべき書類の提出があること。

課税価格

 計算式中の分母に用いる『課税価格』は、相続税法第13条の債務控除及び葬式費用の控除を適用する前の金額によります。
措令25の16②

取得費への加算限度額

 この特例により取得費に加算される相続税額が、譲渡収入から取得費及び譲渡費用の合計額を控除した残額を超える場合には、その超える部分の金額は控除する事が出来ません。(措令25の16②

 つまり、相続税の取得費加算を適用する事により、譲渡所得をマイナス(譲渡損失)にする事は出来ないという訳です。

計算単位

 この相続税の取得費加算の計算は、同一年中に2以上の相続財産を譲渡している場合には、それぞれの資産毎に行います。
措基通39-9、39-11

適用を受ける為の手続き

 この特例を受ける為には、この特例を受けようとする年分の所得税の確定申告書にこの特例を受けようとする旨を記載し(具体的には、所得税の申告書に『措置法第39条』と記載します)、相続税の取得費加算の計算に関する明細書を添付する必要があります。

   

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