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「私、ふと疑問が生じましたの。被相続人の財産を相続するには、その相続開始時点において相続人となる者が生存していなければならないっていうのが、
大原則だと思いますけれど、その相続開始時点において、相続人となる者が胎児だった場合にはどうなりますの?
」
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「あら、『子に過ぎたる宝なし”なんていうことわざは綺麗ごとよ。金銀財宝に勝る宝はありませんわ。』と公言していた貴方が、まだ生まれぬ赤子を話題にするなんて、どういう風の吹き回しかしらね?」
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「うわ〜・・・お姉ちゃん、そんなエゲツない発言をしていたの?我が姉ながらドン引きだね・・・」
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「うるさいですわね!私だって4年に一度位はまともな発言をしますわよ。それでどうなのですの?」
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「確かに、相続人は相続開始時点つまり被相続人が死亡した時点において生存していなければならない、というのが大原則(同時存在の原則)だわ。
でも、相続開始時点において胎児であった者は相続人になれない、とするとその胎児は多大な不利益を被ってしまうわ。」
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「そうよね。相続開始時点ではまだ生まれていないけれど、相続の開始時期があとほんの少し遅れていれば生まれていたかもしれない、といった僅かな時間差によって、
被相続人の財産を相続出来ないとするのは、とても不公平だものね。」
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「そうなの。そこで民法においては、同時存在の原則の例外として、相続開始時点において胎児であった者については、既に生まれていたものとみなして取り扱う事としているのよ。
(民法第886条)」
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「なるほど。相続人となる者が、相続開始の時点で既にお母さんのお腹の中に命を宿していれば、遺産を相続する権利がある訳ですわね。」
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「でもね、とても悲しい事だけれど、もしその胎児が死産となってしまった場合には、残念ながら相続人になる事は出来ないのよ。(民法第886条2項)」
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「それは悲しいわね・・・・生存して生まれてこないと相続人にはなれない訳ね。」
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「そうなの。ただ、ここでいう死産というのは、その胎児が母親の胎内で既に死亡している状態で生まれた場合の話なの。だから、
生まれた直後に死亡した場合であれば、その胎児は相続人となり、被相続人の財産を相続した後、今度は、その死亡した胎児を被相続人とする相続が開始される事になるのよ。」
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「なるほど。医学的には僅かな違いであっても相続という観点からは、大きな違いが生じるケースがあるって訳だね。」
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「そういうことよ。」
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「じゃあ、胎児がいる場合、遺産分割は、その胎児が生まれるまで延期した方が良いって事ですの?」
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「そうね。実際に遺産の分配を受ける事が出来るのは、胎児が生まれてからだから、その胎児が生まれる前に母親がその胎児の相続分を前もって代わりに
受取っておく、という事は出来ないわ。」
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「それを認めてしまうと、『胎児は一人だと思っていたけど、実は双子だった』なんていう場合に話がややこしくなってしまうものね。」
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「そうね。だから相続開始時点において胎児がいる場合には、その遺産分割は胎児が生まれるまで延期した方が無難と言えるでしょうね。」
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「でも待って、相続税の申告期限日において胎児がいる場合はどうなるのかしら?まだ生まれいないからと言って、
申告せずに放置して置く訳にもいかないでしょう?」
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「いい質問ね。実は、相続税法上における胎児の取り扱いは、民法とは少し違っていて、相続税法上の胎児に対する取り扱いは、
簡単にいうと『まだ生まれていない胎児は考慮しない』っていう考え方なのよ。」
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「へぇ〜そうなんだ!」
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「そうなの。例えば、『胎児が生まれる前における共同相続人の相続分』については、『〜(略)〜相続税の申告書提出の時においてまだその
胎児が生まれていないときは、その胎児がいないものとした場合における各相続人の相続分によって課税価格を計算することに取り扱うものとする』
と定められているのよ。(相基通11の2‐3)」
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「なるほど。でもどうして相続税法上では、そのような取扱いになっていますの?」
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「理由としては、相続税という税金を計算する上での課税の公平性を保つ為だと思うわ。税金を課する上では、
全ての納税義務者に対する公平性が保たれる必要があるでしょ?」
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「うん。そうだね。不公平が生じるとお姉ちゃんみたいな業欲人間が黙っていないものね。」
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「そうですとも!出るところに出て声高に不公平さを訴えますわ。」
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「でしょ?だから、『生存して生まれるか否か?』或いは、『生まれてくるのが一人なのか?二人なのか?』といった不確定要素が多分にある胎児については、
相続税法上ではまだ生まれていないものとして取り扱う事になっているのだと思われるわ。」
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「なるほど。胎児が生まれるまでは遺産分割を延期しておくけれど、だからといって、相続税の申告をせずに放置しておくと、無申告加算税や延滞税が課されてしまうから、
胎児をいないものとしてとりあえず相続税を計算して、申告し納付をする訳ね。」
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「そういうこと。その後。無事に胎児が生まれた場合には、修正申告や更正の請求を行って当初の申告内容を是正する事になるのよ。」
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「なるほど・・相続開始時点で胎児がいれば良い訳ですわね・・胎児が・・ニヤリ・・」
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「どうやら神楽はまた邪なプランを企てているようね。
内容を聞くのが怖いから今回はここまでとするわ。ではまた次回!ばいばい!」
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