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税制改正ポイント

〔平成26年1月1日施行〕小規模宅地等の特例_一棟の建物である二世帯住宅の構造要件を撤廃

一棟の建物による二世帯住宅

 昨今、「近くにいた方が安心できる」等の理由から子供が両親と同じ屋根の下で同居するケースが増えていると思います。

 同居する家屋が一棟の建物、例えば一戸建ての建物である場合、以前であれば、両親の居住エリアと子供の居住エリアは、特に区分されておらず、言葉どおりの“同居”のケースが多かったと思います。

 しかし、現在においては、「たとえ同じ屋根の下で暮らすと言えどもお互いのプライバシーを尊重したい」等の理由から、両親の居住エリアと子供の居住エリアを明確に区分した構造になっている一戸建ての家、いわゆる二世帯住宅において同居するケースが増えております。

二世帯住宅のタイプ

一戸建てによる二世帯住宅の場合、その構造的な区別として大きく下記の2つに区分されます。
  ■建物の内部で往来出来るタイプ
  ■建物の内部で往来出来ないタイフ

建物の内部で往来出来るタイフ゜

 両親の居住エリアと子供の居住エリアが壁等で区別されていても、建物内部の階段やドア等によりお互いの居住エリアを往来出来るタイプです。

 例えば、2階建ての建物で、1階部分に両親が居住、2階部分に子供が居住し、1階と2階とを建物内部の階段によりお互いの居住エリアを往来出来るような構造です。
 或いは、平屋造りの建物で、右半分に両親が居住、左半分に子供が居住、お互いの居住エリアは、壁で仕切られているが、ドアを通じてお互いの居住エリアを往来出来るタイプです。

建物の内部で往来出来ないタイフ゜

 上記の2階建ての建物や平屋造りの建物でいえば、階段やドア等により建物内部からでは、お互いの居住エリアを往来する事が出来ず、建物外部の玄関ドアからしかお互いの居住エリアに入る事が出来ないような構造になっている建物がこれに該当します。

小規模宅地等の特例との関係

 従来は、二世帯住宅の敷地について、小規模宅地等の特例を受ける為には、その建物構造に一定の要件が求められていました。

特例を受ける為の建物の構造要件

 例えば、父が所有している土地の上に二世帯住宅を建築し、その二世帯住宅の1階部分に父と母が居住し、2階部分に長男が居住していたと仮定します。

 その後、父が死亡し、長男がその二世帯住宅の敷地を相続した場合、従来では、その敷地について小規模宅地等の特例を受ける為には、1階部分と2階部分とが、階段等を通じて建物内部で往来出来る構造になっている必要がありました。

 このように被相続人である父の居住エリアと相続人である長男の居住エリアとが、建物内部で往来出来る構造になっている場合には、被相続人である父とその相続人である長男は“同居している”ものとして、その一棟の建物の敷地の全体が小規模宅地等の特例対象となりました。

 反対に建物内部で往来する事が出来ない場合には、被相続人である父とその相続人である長男は“別居している”ものとして、長男が相続したこの二世帯住宅の敷地については、小規模宅地等の特例を受ける事が出来ませんでした。

建物の構造要件の撤廃

 平成25年度の税制改正により、上記の二世帯住宅における建物の構造要件が撤廃されました。

構造要件撤廃の内容

 上記の例の場合、一棟の建物である二世帯住宅の敷地について小規模宅地等の特例の適用を受ける為には、被相続人の居住エリアとその相続人の居住エリアとを建物内部において往来出来る構造になっている必要がありましたが、この構造要件が撤廃されました。

 つまり、上記の例でいえば、建物内部では往来する事が出来ない構造になっていたとしても被相続人である父とその相続人である長男は、同居しているものとして、長男が相続したこの二世帯住宅の敷地の全体が小規模宅地等の特例を受ける事が出来るようになったのです。

但し、区分所有建物は除かれる

 上記のとおり、一棟の建物による二世帯住宅についての『建物内部で往来出来る構造であること』という構造要件は撤廃されましたが、その建物が『区分所有建物』である場合には、小規模宅地等の特例対象となる敷地は、その建物の敷地の内、被相続人の居住エリアに対応する部分のみに制限されます。

区分所有建物とは?

 区分所有建物とは、民法の特別法である『区分所有法』が適用される構造上区分され、独立して住居・店舗・事務所・倉庫等の用途に供することができる数個の部分から構成されているような建物のことを指します。

 この区分所有建物になる為には、次の2つの要件を満たす必要があります。

   1.建物の各部分に構造上の独立性があること。

     これは、建物の各部分が他の部分と壁等により完全に遮断・隔離されている事を意味します。
     よって、障子やふすま、簡易間仕切り等で仕切られていてもこの要件を満たす事は出来ません。

   2.建物の各部分に利用上の独立性があること。

     これは、建物の各部分が、他の部分から完全に独立して用途を成す事を意味します。
     例えば、居住用の建物であれば、独利した各部分が、それぞれ単独で住居としての役割を果たす事が出来る、
     という意味です。

区分所有建物の代表例

 これは、皆さんもよく御存じの『分譲マンション』が最たる代表例と言えるでしょう。
しかし、分譲マンション以外にもオフィスビルや商業店舗等であっても上記1と2の要件を満たし、建物の独立した各部分について別個の所有権が成立するのであれば、これも区分所有建物となります。

区分所有建物と小規模宅地等の関係

 先述したとおり、二世帯住宅である一棟の建物が、区分所有建物である場合には、小規模宅地等の特例の対象となる敷地は、その建物の敷地の内、被相続人の居住エリアに対応した部分のみに制限されます。
ここでの注意点は、『建物内部で往来出来るか否か?』という構造要件は、関係無いという点です。

 つまり、たとえ被相続人の居住エリアとその相続人の居住エリアが、建物内部で往来出来る構造になっていたとしても、その建物が区分所有建物である場合には、小規模宅地等の特例対象となる敷地は、被相続人の居住エリアに対応した部分のみになる、という事です。

共有登記の建物だったら?

 では、その建物が、区分所有建物、つまり『区分所有登記』ではなく『共有登記』している建物である場合は、どうなるのでしょうか?

□結論□

 その建物が、共有登記の建物であれば、たとえ被相続人の居住エリアとその相続人の居住エリアとを建物内部において往来出来ないとしても、その建物の敷地の全体が、小規模宅地等の特例対象となるのです。
 もちろん、建物内部において往来出来る構造になっている場合も同様です。

つまり、一棟の建物である二世帯住宅の場合、区分所有建物以外であれば、建物内部における往来の可否に関係無く、その建物の敷地の全体が小規模宅地等の特例対象になる、という訳です。

適用開始時期

 この改正は、平成26年1月1日以後に生じる相続について適用されます。

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