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新リース会計基準

第378号 2025年11月

1.はじめに

上場企業等を対象にした新リース会計基準が令和9年4月1日以後開始事業年度から適用となります。 早期適用が令和7年4月1日以後開始事業年度からとなることに合わせ、令和7年度税制改正で法令改正が行われました。

大半の中小企業には影響がない話かと思いますが、新リース会計基準の見直しのうち、借手についてご紹介します。

2.現状のリース取引

リース取引はファイナンス・リース取引(FL取引)とオペレーティング・リース取引(OL取引)に大別されます。FL取引とは、中途解約不能(ノンキャンセラブル)で、諸経費含めコストを借手が負担する(フルペイアウト)こととなるリースをいい、OL取引はそれ以外のリースをいいます。

FL 取引は分割払いで資産を購入したのと実質的に同じと考え、リース資産とリース負債を貸借対照表に計上(オンバランス)し、リース資産は減価償却費として費用計上、リース負債は元本返済部分以外を利息費用として計上します。

OL 取引は毎月のリース料を費用計上するのみ(オフバランス)となります。

3.会計基準の見直し

新リース会計基準の改正の背景としては、すべてのリース取引について資産と負債を計上する国際会計基準(IFRS)との整合性を図ることで、財政状態(実態)を適正に表示し、国際的な比較をしやすくする観点からの見直しとなります。

具体的には、今までオフバランスであった OL取引も含め、すべてのリース契約についてオンバ ランスすることとされました。

なお、この会計基準が適用されるのは、上場企業とその子会社、会社法上の大会社(資本金5億円以上又は負債200億円以上)であり、すべての法人に強制適用されるものではありません。

4.新会計基準の会計処理

新会計基準では、原則、すべてのリース取引につき、貸借対照表に使用権資産とリース負債を計上し、使用権資産に係る減価償却費とリース負債に係る利息相当額を費用に計上します。

使用権資産の計上にあたっては、リース料から利息相当額の合理的な見積額を控除し、現在価値により算定するため、債務の確定していない部分が含まれていることになります。

5.令和7年度税制改正

法人税法上は、OL取引の借手の賃借費用として損金の額に算入する金額は、会計処理にかかわらず、賃借料のうち債務の確定した部分の金額とする規定が新たに設けられました。つまり、OL取引の税務上の位置付けは引き続き賃貸借処理であることから、会計上と税務上の取扱いが一致しないことになります。

この点、債務の確定していない部分を含めて賃借料の損金算入を認めることは、費用の損金算入に関する法人税の基本的な考え方に反するためとされています。

6.おわりに

適用対象法人に該当する場合には、すべての契約についてリースが含まれているか判断する必要があるなど実務的な負担が増加します。また、財務指標(ROA、自己資本比率等)に影響が生ずる可能性もあるため、早めに準備を進める必要があります。

アトラス総合事務所 税理士 黒川 洋介
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