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令和8年度税制改正大綱

第380号 2026年1月

1.はじめに

自民党・日本維新の会による新たな連立の枠組みの下、「強い経済」「世界で輝く日本」の実現を目指す高市政権が船出しました。

足元の物価高への対応として、物価上昇に連動して基礎控除等を引き上げる仕組みの創設や、税制上の基準額の点検・見直しが行われました。

一方で、これらの減税措置に加え、ガソリンや軽油の暫定税率廃止に伴う代替財源の確保のため、賃上げ促進税制の見直し、教育資金の一括贈与終了、超富裕層の課税強化が行われます。

2.基礎控除、給与所得控除の見直し

令和7年度税制改正で、いわゆる「103万円の壁」は「160万円の壁」に引き上げられましたが、今回の改正で、国民民主党の主張する 178万円まで引き上げられました。

具体的には、所得税の基礎控除が62万円(合計所得2,350万円以下)、所得税及び住民税の給与所得控除の最低保障額が69万円へと4万円ずつ引き上げられました。

この改正は令和8年分以後の所得税及び令和9年度分以後の住民税について適用されます。

また、新たに給与所得控除の最低保障額の特例が創設され、令和8年及び令和9年における給与所得控除の最低保障額を5万円引き上げることとされました。

3.年収に応じた基礎控除額

令和7年度税制改正において、基礎控除の特例措置が創設されましたが、加算額のさらなる見直しが行われました。結果、基礎控除額は原則として62万円ですが、令和8年・令和9年の上乗せ特例を踏まえた中低所得者層の金額は以下のとおりです(合計所得金額ではなく、年収ベースでの記載)。

①給与収入665万円相当以下
→104万円(加算額42万円)

②給与収入665万円相当~850万円相当以下
→67万円(加算額5万円)

4.インボイス制度

(1)2割特例

インボイス制度を機に免税事業者から課税事業者になった方を対象に、令和8年9月30日の属する課税期間までは納税額を売上消費税の2割とすることができる特例がありますが、個人事業主に限定し、納税額を現行の2割から3割に増やした上で令和10年まで2年間延長となります。

(2)免税事業者からの仕入れに係る経過措置

免税事業者からの仕入れについても仕入税額相当額の一定割合を控除可能とする経過措置が用意されていますが、期間と控除可能割合が見直されました。

①令和8年10月~令和10年9月 70%

②令和10年10月~令和12年9月 50%

③令和12年10月~令和13年9月 30%

5.防衛特別所得税(仮称)の創設

防衛費増額に向けた財源確保のため、令和5年度税制改正大綱で明記され、対象税目を法人税、所得税、たばこ税の3つとし、令和7年度税制改正で法人税とたばこ税に関し増税をスタート。所得税については先送りとなっていましたが、今回、所得税についても明確化されました。

当分の間、新たにその年分の基準所得税額の1%を防衛特別所得税として課すこととする一方で、復興特別所得税の税率を1.1%(現行:2.1%)に引き下げ、復興特別所得税の課税期間が令和29年(現行:令和19年)までの間となります。

この改正は、令和9年分以後の所得税等について適用されます。

6.大企業向け賃上げ促進税制の廃止

令和6年度税制改正により、賃上げ促進税制については大企業向け、中堅企業向け、中小企業向けの3区分となりましたが、そのうち、大企業向けの措置を令和8年3月31日で廃止し、中堅企業向けの措置は適用条件を厳しくした上で令和9年3月31日をもって廃止となります。

なお、中小企業向けは現状維持となりますが、教育訓練費に係る上乗せ措置は廃止です。

7.超富裕層への課税強化

年間の所得が1億円を超えると税負担率が低下する逆転現象「1億円の壁」を是正する措置として、令和5年度税制改正で創設され、令和7年分から適用される制度があります。

この適用対象者を拡大し、給与所得や金融所得など合計所得金額から1.65億円(現行:3.3億円)を差し引いた上で 30%(現行:22.5%)の税率をかけて計算することとなります。今回の課税強化の線引きとしては、所得6億円(現行:30億円)となり、対象は 2,000人ほどとのことです。

また、ふるさと納税についても、年収1億円以上の人を対象に住民税から控除できる額に上限を設けることとしました。年収1億円の単身者の場合、寄附額438万円程度で上限に達します。

8.相続等の直前に取得した貸付用不動産の評価

貸付用不動産の市場価格と相続税評価額との乖離の実態を踏まえ、被相続人等が相続開始等5年以内に取得した貸付用不動産については、通常の取引価額に相当する金額(原則、取得価額を基に算定)によって評価することとなりました。

この改正は令和9年1月1日以後に相続等により取得をする財産の評価について適用されます。

9.その他

(1)暗号資産取引を分離課税へ

暗号資産取引業を行う者に対して特定暗号資産の譲渡等をした場合には、その譲渡所得等については分離課税(所得税15%、住民税5%)とし、最大3年間の損失の繰越が可能となります。

この改正は、金融商品取引法の改正日の属する年の翌年1月1日以後に行う特定暗号資産の譲渡等について適用されます。

(2)教育資金の一括贈与(非課税措置)

当初予定されていた期限である令和8年3月31日をもって終了となります。

(3)住宅ローン控除

適用期限が令和12年12月31日まで5年延長されるとともに中古住宅の借入限度額が最大3,500万円(現行:3,000万円)に引き上げられます。これまで対象外であった中古住宅についても、省エネ基準適合住宅以上であれば、子育て世帯の上乗せ措置が適用されることとなります。

(4)税制上の基準額の点検・見直し

長年据え置かれたままの基準額について見直しが行われます。

①従業員への食事支給に関する所得税非課税限度額(月額3,500円→7,500円)

②中小企業者等が取得時に全額損金算入できる減価償却資産の取得価額(30万円未満→40万円未満)

③固定資産税の免税点(家屋20万円→30万円、償却資産 150万円→180万円)

アトラス総合事務所 税理士 黒川 洋介
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