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年末調整のポイント

第377号 2025年10月

1.はじめに

年の瀬が近づくにつれ、年末調整の準備が必要な時期となりました。

今年の年末調整は、令和7年度税制改正で「103万円の壁」が大きく変更となったことにより、実務上、注意すべきポイントが複数あります。

2.年末調整とは

年末調整とは、1年間の給与総額が確定する年末にその年に納めるべき税額を正しく計算し、それまでに毎月の給与から源泉徴収した税額との過不足額を求め、その差額を徴収又は還付し精算する手続きのことをいいます。

3.昨年との変更点

昨年の年末調整と比べて変わった点は次のとおりです。

1 基礎控除、給与所得控除の見直し
2 特定親族特別控除の創設
3 調書方式による住宅ローン控除

4.基礎控除、給与所得控除の見直し

基礎控除が48万円(合計所得2,350万円以下)から58万円に上がるとともに、年収に応じて上 乗せ特例が創設されたため、基礎控除額は次のとおりとなります。

1 給与収入 200万円相当以下
→95万円
2 給与収入 200 万円相当~475 万円相当以下
→88 万円
3 給与収入475万円相当~665万円相当以下
→68 万円
4 給与収入665万円相当~850万円相当以下
→63 万円

なお、給与収入が850万円相当を超える人は、上乗せ特例の適用がないため、基礎控除額は原則どおり58万円となります。

また、給与所得控除については55万円の最低保障額が65万円に引き上げられました(給与収入190万円超の場合の給与所得控除額に改正はありません)。

5.特定親族特別控除の創設

今までは、扶養親族のうち大学生年代(19歳~22歳)の子については特定扶養控除として親の所得から63万円を控除することができましたが、子の年収が103万円をわずかでも超えると、親は特定扶養控除を受けることができませんでした。

この点、令和7年分から子の年収要件を150万円まで上げるとともに、150万円を超えたとしても親が受けられる控除の額が段階的に逓減する仕組み(特定親族特別控除)が創設されました。

6.調書方式による住宅ローン控除

令和7年分の年末調整からは、調書方式による住宅ローン控除の適用を受ける人がいます。調書方式とは、金融機関が税務署に提供した情報に基づき、国税当局から所得者本人に住宅ローンの「年末残高情報」を提供する方式をいいます。

控除証明書等の交付時期は、電子交付の場合は 毎年11月中旬頃、書面交付の場合は入居2年目の11月下旬頃となるため、留意が必要です。

7.おわりに

今年は改正による変更点が多く、書類の様式も変わるため、変更点や記載方法含め、従業員へ早めに周知することが肝要です。

アトラス総合事務所 税理士 黒川 洋介
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