例年、12月号ではこの時期に公表される税制改正大綱をテーマに書いていますが、昨年同様遅れており、大綱が公表されていない状況です(12月18日現在)。
そこで、現時点で議論されている内容(改正案)についてお伝えできる範囲内でご紹介します。
令和7年度税制改正で、いわゆる「103万円の壁」は「160万円の壁」に引き上げられましたが、同年の大綱で「103万円の壁は国民民主党の主張する178万円を目指して、来年から引き上げる。」と明記されていたとおり、令和8年度税制改正でも議論されています。
現状は、基礎控除を4万円、給与所得控除を4万円引き上げ、「168万円の壁」とする案が出ています。
(1)2割特例
インボイス制度を機に免税事業者から課税事業者になった方を対象に、3年間(令和8年9月30日までの日の属する課税期間)は納税額を売上消費税の2割とすることができる特例があります。
利用実態等を踏まえ、個人事業主に限定し、令和10年まで2年間延長した上で、現行の2割から3割に増やす方向で検討されています。
(2)80%控除
インボイスを発行しない小規模事業者が取引から排除されるのを防ぐ目的で、免税事業者からの仕入れについても、制度実施後6年間は仕入税額相当額の一定割合を控除可能とする経過措置が用意されています。
一定割合について令和8年9月30日までの3年間は80%控除が可能、その後、令和11年9月30日までの3年間は50%控除が可能と決まっていましたが、令和8年10月から2年間は70%、令和10年10月から50%、令和12年10月から30%と段階的に下げる案が出ています。
令和6年度税制改正により、賃上げ税制については大企業向け、中堅企業向け、中小企業向けの3区分となりましたが、そのうち、大企業向けの措置を令和7年度末で廃止し、中堅企業向けの措置は令和8年度の適用条件を見直した上で同年度末をもって廃止することが検討されています。
なお、中小企業向けは現状維持の方向です。
近年、貸付用不動産の市場価格と通達評価額との乖離を利用して、相続税・贈与税を大幅に圧縮しているスキームが広く利用されています。
これを是正するために、被相続人・贈与者が相続開始・贈与前5年以内に取得した貸付用不動産について、通常の取引価額に相当する金額(原則、取得価額を基に算定)によって評価する案が示されています。
(1)固定資産税の免税点引上げ
固定資産税が課されない金額基準について、家屋を20万円から30万円に、償却資産を150万円から180万円に引き上げる案があります。
(2)教育資金の非課税贈与終了
当初予定されていた期限である令和8年3月31日をもって終了する方向で検討されています。
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