令和 7 年度税制改正で注目を浴びていた「103 万円の壁」については、税制改正法案が国会審議 により修正されるという異例の結果となりまし たが、例年どおり、年度内である令和 7 年 3 月 31 日に成立・公布されました。
では、最終的に「103 万円の壁」はどのように 変わったのか、ご紹介します。
給与収入がある人は、最低 55 万円の給与所得控除と 48 万円の基礎控除があるため、これらの 控除額の合計である 103 万円以下であれば、所得 は 0 円となり、本人に所得税はかかりません。
12 月に公表された税制改正大綱では現在まで の物価上昇率に基づき、103 万円を 123 万円と引 き上げる旨が明記されました。具体的には、基礎 控除を 58 万円(合計所得 2,350 万円以下)、給与 所得控除の最低保障額を 65 万円 へと 10 万円ず つ引き上げました。
税制改正法案について、政党間協議や国会質疑 を踏まえ、「低所得者層の税負担に対して配慮す る観点や、物価上昇に賃金上昇が追いついていな い状況を踏まえ、中所得者層を含めて税負担を軽 減する観点」から、新たに基礎控除の特例措置が 創設されました。
① 低所得者層の税負担への配慮(恒久的措置)
→生活保護基準や最低賃金の水準を勘案し、課税最低限を 160 万円に引き上げ
② 中所得者層を含めた税負担軽減(令和7年分、令和8年分の時限措置)
→高所得者優遇とならないよう上乗せ
基礎控除額は原則として 58 万円ですが、上乗せ特例を踏まえた金額は以下のとおりです(合計 所得金額ではなく、年収ベースでの記載)。
① 恒久的措置
給与収入 200 万円相当以下
→95 万円
② 令和 7 年分、令和 8 年分の時限措置
(イ) 給与収入200万円相当~475万円相当以下
→88 万円
(ロ) 給与収入475万円相当~665万円相当以下
→68 万円
(ハ) 給与収入665万円相当~850万円相当以下
→63 万円
上記の上乗せ特例は、納税者の 8 割強に当たる4,600 万人が対象となりますが、給与収入 200 万 円相当以下の人(300 万人が対象)を除き、2 年 限りの時限措置となるため、令和 9 年分以降の基 礎控除額は原則どおり 58 万円となります。
本改正は令和 7年12月1日に施行され、令和7年分以後の所得税について適用されます。よって、 今年の11月までの源泉徴収事務に変更はなく、12月に行う年末調整などにおいて対応が必要と なります。ただし、従業員への周知など早めに準備しておく必要がありますので留意が必要です。
所得税における 103 万円の壁とは別に社会保険 の壁があります。社会保険の壁についても議論さ れていましたが、先日「106 万円の壁」を撤廃す ることなどを柱とする年金改革法案が閣議決定 されました。今後の動向に注視したいと思います。
無断転用・転載を禁止します。