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税務調査のポイント

第375号 2025年8月

1.はじめに

国税庁が公表した最新の調査事績によると、法人の実地調査件数は 59,000件、法人税の申告件 数は約 318 万件であるため、単純計算で税務調査の確率としては約1.9%となります。

修正を指摘された件数は45,000件(うち、不正計算 13,000件)であることから、実地調査が入ると約76%の法人が修正申告等により追加の納税をしている計算になります。

2.期ズレ

税務調査でチェックされる主要な項目は、売上の期ズレ、在庫(原価)、人件費、特別な損失、交際費などが挙げられます。

期ズレとは、収益や費用を本来計上しなければならない事業年度と異なる事業年度に計上することです。調査の最初の段階で、会社の概要や売上や仕入れなどの取引の流れ、収益計上時期などをヒアリングした上で、当期に計上すべき売上が翌期に計上されていないかを確認します。

3.交際費

交際費は中小企業の場合、年800万円までは経費となりますが、前提として「得意先、仕入先そ の他事業に関係のある者などに対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するもの」である必要があります。

よって、家族での飲食や家族への贈答などプライベートな支出が入っていた場合には、役員給与(賞与)と認定されることになります。

また、社外飲食費については一人当たり1万円以下であれば、交際費から除くことが可能ですが、法令上、飲食した年月日、飲食等に参加した者の氏名等、参加人数及び飲食店等の名称等の書類を保存しておくことが要件となっています。

4.加算税や延滞税

税務調査で修正事項があり、追加で納税となった場合、加算税や延滞税が発生します。加算税はペナルティの性質を持つもので、延滞税は利息の性質を持つものです。

加算税には「過少申告加算税」、「無申告加算税」及び「不納付加算税」があり、本来納付すべき税 金を隠蔽・仮装した場合には、これら3つの税金 に代えて「重加算税」が課されます。

過少申告加算税の税額は、原則として、新たに納付すべきこととなった税額(増差税額)の 10% となり、無申告加算税の税額は、原則として、納付すべき税額の15%となります。不納付加算税は、源泉所得税が法定納期限までに完納されない場合に納付税額の10%が課されます。

5.重加算税

重加算税は、上記3つの加算税が課される場合において、隠蔽・仮装が認められたときに課されます。基本税率は増差税額の35%~40%です。

隠蔽・仮装の一般的解釈としては、課税標準等又は税額の計算基礎となる事実を隠蔽し、あるいは故意に脱漏することをいい、所得、財産あるいは取引上の名義等に関し、あたかも、それが事実であるかのように装う等、故意に事実を歪曲することをいうものと解されています。

6.おわりに

一度、重加算税を課されるとその後の税務調査の頻度が高まる傾向があります。そのため、調査での指摘を受けることのないよう、日頃から十分に注意しておくことが大切です。

アトラス総合事務所 税理士 黒川 洋介
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