ある販売会社に税務調査に入るとの事前連絡があり、調査当日を迎えました 。
この会社の経理担当者は几帳面で、かなり経理を分かっている人なので、あまり心配することはありません。
調査には税務署の上席調査官と調査官の2人が来ていました 。
上席調査官とは、会社でいう係長のようなポストで、統括官の次のポストです 。
挨拶をして、雑談をしながら会社の概況を聞いています。
そして・・・
●税務署
「ところで前任の社長さんは今何をなさっているんでしょうか?」と、半年前に辞めた社長のことを聞き出しました 。
▲納税者
「さあ、今何をしているのか、どこにいるのかも分かりません」
●税務署
「そうですか。前の社長さんはどのような理由でお辞めになったのですか?」
▲納税者
「健康上の理由で辞めました 。なんせ良く働く人で、朝から晩まで働いていましたから、無理が過ぎたようです。」
経理課長は前社長が辞めた理由を「健康上の理由」と言いましたが、実際は業者との間で何か癒着があったことが原因と聞いていました 。
業者との癒着の内容は、業者に会社への請求を実際の金額に上乗せさせて、業者から裏でその上乗せ分の一部を社長がもらっていたということです 。
もしこの情報を税務署がキャッチして調査に来たのなら大変です 。
業者への会社の支払は、外注費として全額経費として処理していますが、癒着の流れが解明されれば、その経費性も一部否認されかねません 。
外注費の上乗せ額は結果として社長に還流し、会社の金が社長に渡ったことになります。
いわゆる横領でしょうか 。
税務上は、この社長に渡ったお金は社長への賞与とされる可能性があります 。
役員賞与となれば、その分は経費として処理できません 。
税務署はこのことを掴んだのでしょうか 。
●税務署
「そうですか。ところで退職金は社長さんに出たのですか?」
▲納税者
「いいえ、退職金は出ていません」
●税務署
「自分の体を壊してまで会社に貢献したのに、退職金も出なかったのですか」と
チクリと言う 。
▲納税者
「はい、当社にはそのような慣行はありませんので、退職金は出ませんでした」
●税務署
「そうですか」
これは何か情報を握っているに違いありません 。
しきりに辞めた社長のことを聞きます 。
もし社長の所在が分かれば、本人に話を聞くような雰囲気です 。
やはり、業者との癒着のことを知っているのかな・・・・・
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