【先 生】
「さて、出だしからいきなり質問よ。納税義務の有無を判定するにあたり、最も基本となる指標は基準期間における課税売上高が1,000万円を超えているか否かよね?」
【生徒♂】
「な~んだ。いきなり質問するっていうからどんな難問奇問かと思ったら、すごく簡単な質問じゃん♪拍子抜けし過ぎて顎が外れて床に落っこちちゃったよ。」
【生徒♀】
「その落っこちた顎とやらは、落とし物としてそのまま近所の交番のごみ箱に捨ててきてあげますけれど、質問に対する回答は如何ですの?」
【生徒♂】
「え~と・・・先生の言うとおり、基本は基準期間における課税売上高が1,000万円を超えているかどうか?で判定するよ。・・・って、その前に落とし物を交番のごみ箱に捨てちゃダメでしょ。捨てずに届けなさいっての・・・」
【先 生】
「確かに基本は、基準期間の売上高だったわね。だけど、平成25年1月1日以後に開始する事業年度からは、たとえ基準期間における課税売上高が1,000万円以下であったとしても、更にもう1つの指標を用いて判定する事になっているのだけれど、その指標は何か覚えているかしら?」
【生徒♀】
「もちろん♪特定期間における課税売上高ですわね?」
【生徒♂】
「僕だって覚えているよ。その特定期間は、原則として、個人事業者の場合には、その年の前年1月1日から6月30日までの期間を指して、法人の場合には、前事業年度開始の日以後6ヶ月の期間を指すんだったよね。」
【先 生】
「そのとおりよ。たとえ基準期間における課税売上高が1,000万円以下であったとしても、特定期間における課税売上高が1,000万円を超えていれば、課税事業者になるのだったわね。」
【生徒♂】
「あれ?確か、課税売上高に代わる指標を用いて判定しても良いのじゃなかったっけ?」
【生徒♀】
「はい!それは特定期間中における給与等の支給額ですわ。」
【先 生】
「そのとおりよ。覚えていて偉いわね。特定期間中における課税売上高に代えて、その特定期間中における給与等の支給額をもって特定期間における課税売上高とする事が出来るわ。(消法9条の2第3項)」
【生徒♂】
「だから、特定期間中の課税売上高が1,000万円を超えていたとしても、その特定期間中における給与等の支給額が1,000万円以下となっていれば、免税事業者として判定されるんだったよね。」
【先 生】
「そのおりよ。」
【生徒♀】
「私、少々気になる事があるのですけれど・・・?」
【先 生】
「あら、どんな事?」
【生徒♀】
「特定期間中の給与等の支給額をもって、特定期間における課税売上高とする事が“出来る”と定められていますでしょ?“出来る”ってことは、“しなくてもよい”って事ですの?」
【先 生】
「とてもいいところに気が付いたわね。そのとおりなのよ。この『特定期間中における給与等の支給額をもって特定期間における課税売上高とする事が出来る』という規定は、納税義務者の選択に委ねられているのよ。」
【生徒♂】
「つまり、特定期間中の課税売上高、又は、給与等の支給額のいずれか好きな方を選択して、それが1,000万円を超えていることをもって『納税義務あり』として申告してもOKって事?」
【先 生】
「そのとおりなの。だから例えば、基準期間の課税売上高が1,000万円以下である今期について、消費税の還付を受けたいから、本来なら課税事業者を選択しておくべきだったのだけれど、うっかり課税事業者の選択届出書を提出し忘れてしまった、と仮定するでしょ。」
【生徒♀】
「ええ。どこかの誰かさんみたいなアンポンタンならやりかねない失敗ですわね。」
【生徒♂】
「その“どこかの誰かさん”っていうのは何処の誰の事だい?簡潔に述べてみよ。」
【先 生】
「あなたの事よ。で、特定期間中の課税売上高は1,000万円を超えているのだけれど、給与等の支給額は1,000万円以下だったとするわ。通常だったら給与等の支給額が1,000万円以下である事をもって免税事業者になる方を選択するケースが多いと思うけれど、あえて課税売上高が1,000万円を超えている事をもって課税事業者になる、という選択をすれば、課税事業者として還付申告をする事が可能になるってわけ。」
【生徒♂】
「なるほどね。一般的には免税事業者になる方の指標を選択するだろうけれど、還付申告をする為だったら、課税事業者になる方の指標を選択するケースもあり得るって訳だね。」
【先 生】
「そういうこと。意外と見落としがちな論点だから気を付けておいてね。という訳で今回はここまで。ではまた次回!ばいばい!」
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