社長の退任に伴う臨時株主総会議事録が、出席取締役の印も押されずに、経理担当者の机の引き出しの中にありました。
調査官に見えないようにして、何とか印鑑を押して格好をつけなくてはなりません。
確かに、議事録がなくても臨時株主総会を開いて役員退職金支給に係る決議をしていれば、それだけで有効なわけですが、第3者に目に見える形で説明するには、議事録という形式が必要です。
商法でも株主総会の議事録の作成が義務付けられ、10年間の保存が要求されています。
■会計事務所
「各取締役の印鑑を早く押してください」と小声でささやきます。
▲納税者
「はい」と小さな声で答えています。
「すみません・・・」
■会計事務所
「どうしました」
▲納税者
「各取締役の印鑑はあるのですが・・・」
■会計事務所
「だから、あったら早く押してください!」
▲納税者
「押したいんですけれど・・・朱肉が・・・」
■会計事務所
「朱肉?」
▲納税者
「朱肉が調査官の座っている机の引き出しに・・・・」
■会計事務所
「・・・・・」
もう参りました。
調査官も我々の挙動不審におそらく感づいていることでしょう。
もう、開き直りです。
「すみません、チョッといいですか?」と言って座っている調査官に少しどいてもらって、その前に立ち調査官から見えないように引き出しを開けて黒い朱肉の入れ物を取り出しました。
また、この朱肉入れが大きい入れ物で、もう何を取り出したのかバレバレです。
さっそく議事録に印鑑を押してもらいます。
▲納税者
「全部押しました」
■会計事務所
「コピーをとってください」と小声で指示をします。
コピーした臨時株主総会議事録を調査官に「すみません・・・」と言って渡します。
調査官は「ニヤリ」と笑って受け取りました。
なかなか話の分かる調査官でしたね・・・
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