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減価償却の改正

第051_1号 1998年6月

1.はじめに

平成10年度の税制改正で一番大きく変わったのが減価償却に関する改正です。改正後いろいろな取扱が発表されていますので、それらを取り混ぜながら説明します。

2.耐用年数の短縮

①耐用年数とは?

耐用年数とは、税法に定められた固定資産の使用可能年数のことですが、この度の改正で建物(建物付属設備、構築物等は従来通り)の使用可能年数が短縮されました。

よくある建物について見ると以下のとおりです。

●鉄筋コンクリート造りの建物
事務所用 65年→50年
住宅用 60年→47年
店舗用 47年→39年
●木造モルタル造りの建物
住宅店舗用 22年→20年

②耐用年数短縮の効果は?

減価償却は、購入した金額を耐用年数の各事業年度にわたって費用として計上する方式ですから、耐用年数が短縮した分、減価償却費は自動的に各年増加することとなります。

(例)購入価額100百万円の鉄筋コンクリ ート造りの事務所用建物(定額法)

改正前:100,000,000円×0.9×0.016(65年) = 1,440,000円

改正後:100,000,000円×0.9×0.020(50年) = 1,800,000円

この例では、年間360,000円減価償却費が耐用年数の短縮により増加することになります。

③いつから適用される?

平成10年4月1日以後開始する事業年度から適用されます。
3月決算ならこの4月1日以降から、12月決算なら来年の1月1日からとなります。個人の場合は平成10年分の所得税から適用になります。

④適用日以前からある建物も対象?

適用日以降は、昔からある建物もこれから買う建物も全て耐用年数短縮の対象となります。

3.建物は定額法のみ適用。定率法は不可。

平成10年4月1日以後取得する建物ついては償却方法は定額法のみとなります。法人個人とも適用時期は一緒です。

4.2分の1簡便法の廃止

機械装置・車両運搬具・工具器具備品・工業所有権について認められていた、期中取得資産の償却を簡便的に年間償却額の2分の1とする方式が廃止されました。

法人は平成10年4月1日以後開始する事業年度から、個人は平成10年度から適用されます。

5.少額減価償却資産の基準引き下げ

経費で落とせる資産購入の金額が20万円未満から10万円未満に引き下げられました。これからはパソコンでも10万円未満のものしか消耗品費等で損金処理することはできません。

しかし、10万円以上20万円未満の資産については、事業年度毎に一括して3年間で償却することができます。

20万円以上 固定資産として計上後耐用年数に亘って減価償却を通じて損金に
20万円未満10万円以上 20万円以上と同じ処理か、又は一括して3年で償却
10万円未満 経費処理、しかし20万円未満10万円以上と同じ処理も可

法人は平成10年4月1日以後開始する事業年度、個人は平成11年度から適用されます。

アトラス総合事務所 公認会計士・税理士 井上 修
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