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やさしい相続税

第052_1号 1998年7月

1.はじめに

地価が下落した今日においてはあまり相続税に対する関心がバブル期よりは少なくなっているようです。しかし、誰でも必ず一度は相続に直面することがあるはずです。その時に相続税がかかるのか否か。これはちょっとした相続税の基礎知識があればおおよそ判断できます。

2.相続人はだれ?

故人の配偶者は常に相続人となります。

  • 子がいれば子と配偶者が相続人。
  • 子がいなければ故人の父母と配偶者が相続人。
  • 子も父母もいなければ故人の兄弟姉妹と配偶者が相続人。

3.基礎控除

相続財産が基礎控除以下であれば相続税の申告義務も納税義務も当然ありません。ですから、相続税の心配をする前に正確な基礎控除額を知ることが必要です。

基礎控除=5千万円+1千万円×相続人数

相続人が妻と子供2人だと
   5千万円+1千万円×3人=8千万円です。

相続財産が8千万円以下であれば相続税は課税されません。

4.相続財産はいくらあるのか?

現預金、不動産などのプラスの財産から借入金のようなマイナスの財産を引いた残りが相続税の対象となる相続財産となります。

現預金が5千万円あれば相続税法上の評価も5千万円ですが、時価5千万円する自宅土地建物の相続税法上の評価は、時価の5千万円ではありません。

5.自宅土地建物はいくらか?

●建物の評価

相続税法上の建物の評価は固定資産税評価額です。

毎年送られてくる固定資産税の納税通知書に付いている課税明細書に評価額が記載されていますのでご覧になって下さい。また、市区町村の固定資産税の係に行けば評価証明をもらうこともできます(有料)。

●土地の評価

自宅土地の相続税法上の評価には特例が設けられています。

それは、「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」というややっこしい特例ですが、簡単に言うと「自宅土地の200㎡迄は通常の路線価による評価額の20%又は50%の評価にする特例」です。

20%評価、つまり時価評価(路線価評価)の8割引で自宅土地を評価できるケ-スは以下のとおりです。

  • 故人所有の自宅を配偶者が相続で取得した場合
  • 故人と同居していた親族が相続で取得してそこに住み続ける場合。
  • 故人の配偶者や故人と同居していた親族がいなくて、それ以外の自宅を持っていない相続人が相続で取得した場合。
  • 故人と同居はしていないが故人と生計を一にする親族が住んでいて、相続で取得してそこに住み続ける場合。

上記の4つのケースに該当しない場合は、自宅土地の200㎡迄の評価は5割引となります。

このように自宅不動産の評価はかなり優遇されています。路線価で評価して2億円する60坪の自宅土地でも、8割引では4千万円の評価となるのです。特例の適用には他の複雑な要件もありますが、一度確認されると相続税の問題から解放されるかもしれません。

アトラス総合事務所 公認会計士・税理士 井上 修
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