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会計ビッグバン

第089_1号 2001年9月

1.はじめに

ただでさえ株価が下落し、本業の売上も伸ばすことが困難な経済状況の中で、それに輪をかけたように決算書を悪くさせる新会計制度の導入。最悪のタイミングで会計ビックバンが数年前から始まりました。今でも減損会計の導入時期を巡って新聞紙上をにぎわしています。この会計ビックバンの内容について簡単に説明することにします。

2.新会計制度がなぜ必要か

日本の会計基準を国際会計基準(IAS:International Accounting Standards)に近づけるようにするためです。なぜIASに近づけなければならないかというと、海外での資金調達、M&A、海外事業進出などの機会に国際企業間で共通の基準(IAS)で比較評価される決算書を作成する必要性に迫られているからです。

3.減損会計

土地や建物等の固定資産は買ったときの金額、つまり取得価額でもって決算書上(貸借対照表)に記載されてきました。取得価額で記載されているということは、買ったときの金額が1億円の土地の時価が今は3千万円であったとしても1億円で貸借対照表に載ることになるのです。

減損会計はそうではなくて、今はもう3千万円の価値しかないのだから、損益計算書において7千万円の評価損を計上して(7千万円損が増えるということです)、貸借対照表には3千万円の価額で計上します。

4.キャッシュ・フロー

「キャッシュ」とは「お金」で、「フロー」は流れです。つまりキャッシュフローとはお金の流れを意味します。なぜこのキャッシュフローが重視されるようになったかというとそれは利益の曖昧さにあります。

例えば先に述べた減損会計により固定資産の評価が1億円減ったとすると、確実に利益は1億円減少します。昨日までの利益と今日の利益がたったひとつの新制度を導入したことにより1億円も変わってしまう、この曖昧さです。これに対してお金は正直です。減損会計が導入されて1億円の損失が出てもお金はそのままです。減ったりしません。

営業で稼いだお金から将来の投資に使ったお金を差し引いた残りのお金を「フリー・キャッシュフロー」と呼び、これを最大化することが重要な経営目標となってきています。

5.退職給付

簡単に言うと将来支払わなければならない退職一時金や年金の現時点での必要額(退職給付債務)から信託銀行などにお金を出して運用委託している年金資産との差額を退職給付債務の積立不足として損益計算書に費用として計上するというものです。

積立不足額が億単位で出ているため、本業の利益でカバーできない会社もあります。

6.金融資産の時価評価

株式や債券などの有価証券の取引相場による時価での評価(日経平均が1万円割れで大変です)、ゴルフ会員権の時価での評価(こちらもピーク時の10分の1になってリるため大変です)、その他貸付金の評価も大変厳しい評価となり、より一層の決算書の悪化を招く新会計制度の導入となっています。

アトラス総合事務所 公認会計士・税理士 井上 修
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