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新証券税制の特定口座

第101_2号 2002年9月

新証券税制のポイントについては当コーナーでもすでにご紹介しました。(2001年10月号)今回はそこで触れなかった特定口座について見て行きたいと思います。

1.申告不要制度としての特定口座

①特定口座とは?

 株式譲渡益の課税は来年の2003年から源泉分離課税が廃止され、申告分離課税に一本化されます。

そこで問題になるのが確定申告の事務負担です。源泉分離課税のときには必要なかった、確定申告をして税金を納付するという面倒な手間を投資家自身が負うことになるのです。

その事務負担を証券会社が代行して軽減しようとするための専門の口座がこの特定口座なのです。

②特定口座の設定

特定口座は証券会社1社につき1口座に限られます。したがって複数の特定口座を持つためには複数の証券会社と取引することになります。

③ 特定口座の2つのタイプ

特定口座には次の2つのタイプがあり、投資家は毎年最初の取引時点でどちらかを選択できます。

イ) 源泉徴収有りのタイプ

このタイプは投資家が特定口座を通して取引をするたびに証券会社が株式譲渡益を計算して15%の所得税を源泉徴収し、税務署に納付してくれるものです。

5%の住民税については証券会社が市区町村に課税資料を提出します。そして、市区町村が投資家に納付書を送付してくれるのです。投資家にとっては確定申告不要となるわけです。

ロ) 源泉徴収無しのタイプ

このタイプは、源泉徴収はしないで証券会社が特定口座における年間の取引報告書を翌年の一月末までに投資家に発行し、投資家がその報告書をもとに確定申告をするというものです。

報告書には取引した長期、短期の損益、取得価格、支払手数料の額など確定申告に必要な資料が記載されていますので、従来の申告分離の確定申告より簡易な申告が可能となっています。

2.確定申告をしたほうがよいケース

特定口座により申告不要としていても、次のようなケースでは投資家はみずから確定申告しないと損をしてしまいます。

  • 特定口座での取引で、譲渡損が発生しているものがあり、年間を通じて源泉徴収税額が過大となり、その還付申告を受けたい場合。
  • 1つの証券会社の特定口座の年間の譲渡損益が損失となっており、他の証券会社の特定口座の譲渡益と損益通算したり、譲渡損の繰越控除制度を適用する場合。
  • 10%の軽減税率や100万円の特別控除などの優遇措置を受けて、源泉徴収税額の還付を受けたい場合。

そのほか元本1000万円までの非課税措置との組み合わせをどうするかなどの問題もあり、投資家は信頼できる証券会社とよく相談すると同時に、投資家自身が税制をよく理解して研究することが大切となってきます。

アトラス総合事務所 公認会計士・税理士 井上 修
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