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退職金と源泉徴収

第113_2号 2003年09月

退職金に対する課税は老後の生活資金ということで軽減されていますが、所定の手続きをとらないと思わぬ税金がかかってきます。

1.退職所得の受給に関する申告書

退職により一時に受け取る退職金に対する所得税の源泉徴収は「退職所得の受給に関する申告書」の提出の有無によって、その取扱いが大きく違ってきます。

1) 受給に関する申告書を提出している場合

「源泉徴収税額表」に掲載されている「源泉徴収のための退職所得控除額の表」と「退職所得の源泉徴収税額の速算表」によって、退職所得の適正税額が計算されます。

適正税額ですから、原則として源泉徴収で課税関係は終了し、翌年3月の確定申告は不要となります。

ただし、所得計算において損益通算、繰越控除、あるいは所得控除などが関係してくる場合は確定申告をすれば源泉徴収税額が還付される可能性があります。

所得控除のうち、老年者控除や配偶者特別控除の適用要件として「合計所得金額1000万円以下」というのがあります。退職所得は合計所得金額に含まれてきますので注意が必要です。

また、現行の20%の定率減税制度は退職金の源泉徴収の際に適用されていませんので、確定申告で適用を受け、還付になることもあります。

2) 受給に関する申告書を提出していない場合

退職手当等の金額に対して20%の源泉徴収が行われます。退職所得控除額を控除する前の金額に20%ですから、いかに少ない退職金でもその20%を源泉徴収することになります。

この20%の源泉徴収税額が適正税額より多いということなら、翌年3月の確定申告をする必要はありません。しかし、当然損をしてしまいますから、確定申告をして余分の税金を還付してもらうことになります。

2.退職金に対する税額計算

まず、所得税の課税の対象となる退職所得金額は次の算式により計算されます。

(退職手当等の金額-退職所得控除額) × 1/2 = 退職所得金額
1) 退職所得控除額
原則として、退職者の入社から退職までの引き続き勤務した期間(1年未満切り上げ)により勤続年数を求め、退職所得控除額の表により勤続年数に応じた退職控除額を求めます。
障害者になったことに直接起因して退職した場合は100万円加算された「障害退職の場合」の欄によります。
2) 退職所得に対する所得税額

〈例〉

  • 「退職所得の受給に関する申告書」を提出
  • 退職金 1000万円
  • 勤続年数 20年
  • 勤続年数から一般退職の場合で退職所得控除額は800万円
    • 10,000,000円―8,000,000円=2,000,000円
    • 2,000,000円×1/2=1,000,000円
    • 速算表より
    • 1,000,000円×10%=100,000円
アトラス総合事務所 公認会計士・税理士 井上 修
◆発行 アトラス総合事務所

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