昨年末に発表された税制改正大綱において、中小企業を狙い撃ちした課税の強化策が盛り込まれています。それが役員報酬に対する法人税法上の取扱いの変更です。
個人事業の売上が2,000万円、経費が1,200万円とすると所得は2,000万円-1,200万円=800万円として計算されます。これをそのまま法人化して事業主が年間800万円の役員報酬をもらうとします。法人の利益は売上2,000万円-経費1,200万円-役員報酬800万円=0となります。
ここで個人の所得を考えてみると、個人事業の場合は800万円の所得でした。一方法人化した後はそれが800万円の役員報酬に変わりました。役員報酬800万円がそのまま個人の所得になるのであれば、個人事業の場合と税金に差はありません。しかし、役員報酬はそうではないのです。800万円の役員報酬には200万円の給与所得控除という経費が認められていて、それを控除した600万円が個人の所得になるのです。
個人事業をそのまま法人化することにより、このように何もしないで個人の所得が200万圧縮できるということです。
今年の5月から会社法が改正され、資本金が1円(理論上はゼロも可能)から、かつ取締役1人で、そして類似商号の規制もなくなり、また資本金の払い込みも簡易化されて株式会社が設立しやすくなります。個人事業を法人化するだけで節税のメリットがあるため、今回の改正は節税目的の個人事業の法人成りをけん制しようとする意味合いもあるのでしょう。
先ほどのケースで説明しますと、法人の所得の計算を次のように計算することになります。
売上2,000万-経費-1,200万-役員報酬800万+給与所得控除200万=所得200万
つまり、役員報酬800万円から控除される給与所得控除200万を法人の税金の計算において所得にプラスするのです。つまり、個人で節税した分を法人で納めてくださいといった理屈です。
次の①と②の条件を満たす会社です。
「直前3年以内に開始する各事業年度の法人の所得の平均額(1)とオーナー役員の役員報酬の平均額(2)の合計額(3)が、以下の場合には適用除外になります」
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